XR利用拡大のハードルを下げるには

 XR Worldで展開中、あるいは展開予定のコンテンツなどを見ると、有名なアーティストやアイドルなどを多く起用しており、そうした点からもNTTグループがNTTコノキューへいかに力を入れているかを見て取ることができる。ただ現状のXRを取り巻く環境を見るに、事業化への道筋が容易ではないように思える。

XR Worldで展開される新たなコンテンツとして、アイドルグループ「AKB48」のメンバーにバーチャルアイドルが加わった「AKB48 SURREAL」のライブなども展開するとしている
XR Worldで展開される新たなコンテンツとして、アイドルグループ「AKB48」のメンバーにバーチャルアイドルが加わった「AKB48 SURREAL」のライブなども展開するとしている
[画像のクリックで拡大表示]

 最大の課題はやはり利用者層の拡大であろう。メタバース関連のサービスを積極的に利用するのはまだ先進層が多く、手軽さよりも自由度を求める傾向が強い。いわゆる「Web3」関連の技術やサービスと相性が良いとされるのはそうした背景があるからだろうが、そのことが一般層にまで利用を広げる上で少なからずハードルとなっているのも事実だ。

 それゆえNTTコノキューでも、XR WorldをVRデバイス専用としてではなく、Webブラウザーから利用できるようにするなどして利用のハードルを下げることに力を入れているようだ。だが一時的ではなく、継続的な利用につなげる上ではコンテンツの継続性も求められるだけに、いかにして魅力あるコンテンツを提供し続ける、あるいはユーザーが生み出せる環境を作り上げられるかが重要になってくるだろう。

 NTTコノキューの代表取締役社長に就任した丸山誠治氏は「いま我々はXR時代の入り口に立っているという認識」だと話し、顧客がXRに価値を感じるためにはサービスだけでなくハードやネットワークの全てにおいてレベルを上げていく必要があるとしている。早い段階から積極投資をすることでそれらのレベルアップを図り、XRの価値を高め利用者を増やすことが同社の狙いとなるようだ。

 ただ資本力のあるNTTグループとはいえ、ある程度の期間で大きな収益化が見込めなければ事業を継続するわけにはいかないだろう。国内外の大手企業がメタバースを主体にXRへ勝負を掛けようとする動きが目立ってきているだけに、この事業に注力するタイミングは悪くないと感じる。その一方で、明確な成果を得るまでの道のりは長く、かじ取りが極めて難しいと感じてしまうのも正直なところである。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手掛けた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手掛ける。

[日経クロステック 2022年10月17日掲載]情報は掲載時点のものです。

日経クロステックは、IT、自動車、電子・機械、建築・土木など、さまざまな産業分野の技術者とビジネスリーダーのためのデジタルメディアです。最新の技術や法改正、新規参入者や新たなビジネスモデルなどによって引き起こされるビジネス変革の最前線をお伝えします。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「日経クロステック」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。