「土屋君、ちょっと面白いモノがあるんだけど分析してみない?」
オフィスで仕事をしていると、ニヤニヤ顔の日経エレクトロニクス編集長が近づいてきた。
「これなんだけどさ」
見せられたのは米Apple(アップル)の大ヒットワイヤレスイヤホン「AirPods Pro」の箱。どう見ても箱の外観はAirPods Proだが、偽物だという。
「知人がさ、個人売買サイトでAirPods Proを購入したら偽物が届いたって言うんだ。日経エレクトロニクスで分解してみないってくれたんだけど、土屋君どう?」
上司から振られた仕事に対しての返事は「イエス」か「はい」しかない。もちろん、記者としても興味が湧いたので調べてみることにした。
まず、箱の外観を観察してみた。偽物を提供してくれた人によると、Appleのロゴがかすれていることなどを理由に偽物と判断したそうだが、AirPods Proのユーザーではない記者にはどこが違うのかさっぱり分からない。そこでまずは本物を購入して、偽物と比較してみた。
届いた本物と偽物の箱を机の上に並べて比べたところ、本物と同じ白色の貼り箱(ボール紙などで箱の芯をつくり、その上に素材を貼付して成型加工したコストの高い化粧箱)を使っているのが分かった。天面の製品写真も、Appleのロゴも、商品名も、デザインの細部に至るまで両者は酷似している。
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