アップルカーを巡る報道では、韓国・現代自動車の交渉は破断に終わったと伝えられている。現代が製造の請負を嫌ったのは車両開発の主導権を外部の企業に握られたくないからだろう。しかし、もしも既存の完成車メーカーの中で、モビリティーサービスを提供したい新規参入企業の車両製造を手がけるメーカーが出てくれば、そうした完成車メーカーは、工場の稼働率を高めることができ、そのぶん製造設備の償却を早め、最新の設備を導入してさらに競争力を高めるというサイクルに入ることも考えられる。

 半導体だけではない。電機・電子分野ではブラウン管テレビから液晶テレビへの世代交代においても開発・製造の分離が起こり、日本の家電メーカーは競争力を失った。車の主流がエンジン車からEVに移り変わるとき、そのビジネスモデルもまた変わるのが必然である。そして半導体の世界に見るように、その生き残りの解も1つではない。

 アップルのように製造を最先端の製造設備を持つメーカーに任せるという選択肢もあれば、サムスン電子のように開発・製造の両方を手掛けつつ外部から製造を請け負って設備稼働率を維持するという考え方もあるだろう。ただ1ついえるのは、技術の世代交代が起きるときには必ずビジネスモデルの変化を伴い、変われない企業は淘汰されるということだ。自社の事業をいったん「解体」し、時代の流れに合うように組み立て直すことができなければ、巨大な完成車メーカーといえども変化の奔流にのみ込まれてしまうだろう。

鶴原 吉郎(つるはら・よしろう)
オートインサイト代表/技術ジャーナリスト/編集者
鶴原 吉郎(つるはら・よしろう) 1985年日経マグロウヒル社(現日経BP)入社、新素材技術の専門情報誌、機械技術の専門情報誌の編集に携わったのち、2004年に自動車技術の専門情報誌「日経Automotive Technology」の創刊を担当。編集長として約10年にわたって、同誌の編集に従事。2014年4月に独立、クルマの技術・産業に関するコンテンツ編集・制作を専門とするオートインサイト株式会社を設立、代表に就任。
Apple Car デジタル覇者vs自動車巨人
著者●日本経済新聞・日経クロステック合同取材班/定価●2420円(税込み)/発行●日経BP/判型●A5判272ページ/ISBN 978-4-296-11016-2
著者●日本経済新聞・日経クロステック合同取材班/定価●2420円(税込み)/発行●日経BP/判型●A5判272ページ/ISBN 978-4-296-11016-2

 アップル、グーグル、アマゾン…。デジタルの覇権を握る巨大企業たちがついに自動車産業に参入してきました。これにより、車そのものが、そして自動車産業が大きく変わろうとしています。車そのものは、「人を乗せて移動すること」とは別の新たな価値を提供することになるでしょう。例えばアップルなら、iPhoneとApple Watch、そして車がシームレスにつながった形での新たなライフスタイルの提案に期待が膨らみます。車のかつての価値は色あせ、全く別次元の価値が備わることになるでしょう。デジタル覇者の参入で変わる自動車産業の未来を、日本経済新聞と日経クロステックの合同取材班が総力をあげて取材しました。伝統に縛られた殻を破り、新しい産業へと生まれ変わろうとする自動車産業の未来を読み解く一冊です。

[日経クロステック 2021年8月25日掲載]情報は掲載時点のものです。

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2/22ウェビナー開催、ウクライナ侵攻から1年、日本経済「窮乏化」を阻止せよ

 2022年2月24日――。ロシアがウクライナに侵攻したこの日、私たちは「歴史の歯車」が逆回転する光景を目にしました。それから約1年、国際政治と世界経済の秩序が音を立てて崩壊しつつあります。  日経ビジネスLIVEは2月22日(水)19時から、「ウクライナ侵攻から1年 エネルギー危機は23年が本番、日本経済『窮乏化』を阻止せよ」と題してウェビナーをライブ配信する予定です。登壇するのは、みずほ証券エクイティ調査部の小林俊介チーフエコノミストです。世界秩序の転換が日本経済、そして企業経営にどんな影響を及ぼすのか。経済分析のプロが展望を語ります。視聴者の皆様からの質問もお受けし、議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。 

■開催日:2023年2月22日(水)19:00~20:00(予定)
■テーマ:ウクライナ侵攻から1年 エネルギー危機は23年が本番、日本経済「窮乏化」を阻止せよ
■講師:小林俊介氏(みずほ証券エクイティ調査部チーフエコノミスト)
■モデレーター:森 永輔(日経ビジネスシニアエディター)
■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■主催:日経ビジネス
■受講料:日経ビジネス電子版の有料会員のみ無料となります(いずれも事前登録制、先着順)。視聴希望でまだ有料会員でない方は、会員登録をした上で、参加をお申し込みください(月額2500円、初月無料)

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