なぜ日本では半導体の開発・製造分離が進まなかったのか。その理由の1つに、当初のファウンドリーは研究開発に投資するほどの利幅を確保できず、製造技術面で統合メーカー(半導体の開発から製造まで一貫して手がけるメーカー)に比べて一段低いとみなされていたことがある。実際、当時のファウンドリーは最先端デバイスの製造ができず、少し遅れた製品を他社ブランドで安く製造する存在だった。少なくとも、日本の半導体メーカーはファウンドリーをそう見下していた。「見下される存在になりたくないという意識が、日本の半導体メーカーにはあったのだろう」と西村氏は推測する。

 ところが、次第にファウンドリーの製造技術が統合メーカーの製造技術を凌駕するようになっていく。その理由の1つは、半導体製造装置メーカーとファウンドリーが連携を強めたことだ。ファウンドリーの方が設備の稼働率が高いため装置の償却が早く、従って装置の更新が早い。ファウンドリーの設備の方が新しくなったのである。

 さらに、製造装置メーカーが新装置の開発にファウンドリーの工場を利用するようになった。というのは、半導体の統合メーカーの場合、自社ラインを装置メーカーに貸して装置開発に協力したとしても、そこで得られた情報が装置メーカーを通して他の統合メーカーに伝わることを嫌ったからだ。

 半導体は微細化するほど、電子の移動距離が短くなるので、計算が速くなる。逆にいえば同じ内容の計算なら電子の移動距離が短くなる分、消費電力を低減できる。米アップル(Apple)は「M1」チップを搭載した「マックブックエア(MacBookAir)」が、最新のウィンドウズ(Windows)パソコンのピークパワーを1/4の消費電力で発揮できると主張している。先に触れたようにアップルのM1チップは台湾の台湾積体電路製造(TSMC)が製造しており、製造装置メーカーとの関係の深さが技術力の差になってきている可能性が高い。インテルがファウンドリー事業に乗り出すと表明したのも、そういった背景があってのことだろう。

完成車メーカーも「ファウンドリー」になる?

 車は組み立て産業であり、半導体とは製造プロセスが全く違うという意見もあるかもしれない。確かに現在のエンジンや変速機は人手による組み立て工程も多い。しかし、これがモーターになればほとんどの製造工程は自動化される。また、現在は複数のプレス部品を組み合わせて造っている車体の製造ラインを大胆に改革しようという動きもある。例えば米テスラ(Tesla)は住宅ほどもあるような巨大なアルミダイカストマシンを導入し、70以上あった鋼製プレス部品を1つのアルミダイカスト品に集約しようとしている。こうした巨額の投資を伴う装置の導入は生産性を飛躍的に向上させるが、投資を回収できる確かな見通しがなければ踏み切れない。

 先に触れたように、今後、車の電気自動車(EV)化や、自動運転車を使った移動サービスの登場に伴って、異業種から自動車産業に参入する動きは加速すると考えられる。しかし、異業種の企業は車両の製造ノウハウを持っていないし、そもそも車両を製造することにそれほど興味を持っていない。というのも車両製造というビジネスは、IT産業から見ると利益率の低いビジネスであり、魅力に乏しいからだ。そのため「車両製造は外部の企業に任せたい」と考えており、今後も車両製造の製造請負に対するニーズは高まる一方だろう。