つまり、エンジン車からEVへという大変革期をとらえ、新規参入企業、完成車メーカー、部品メーカーが三つ巴になって、EVプラットフォーム供給という新しいビジネスで覇を競い始めているのだ。多くの企業へEVプラットフォームを供給する企業は量産効果によってコスト競争力を強め、寡占化を進める可能性がある。これまで完成車メーカーは車の開発、製造から販売網の構築までを一貫して手掛けてきた。しかし、EVプラットフォームを供給する巨大企業が出現すれば、完成車メーカーは企画・開発と製造の分離という「解体」を迫られる可能性がある。

広がる賛同の輪

 しかし、鴻海のような自動車産業の経験のない企業に、勝算はあるのだろうか。実は鴻海は、独力で競争力を確保しようとはしていない。同社がMIHをEVオープンプラットフォームと呼んでいるように、鴻海の狙いは「自動車製造のオープン化」にある。

 MIHの開発コンソーシアムである「MIHオープンプラットフォームアライアンス(MIH Open Platform Alliance)」にアライアンスパートナーとして名を連ねる企業数は、鴻海の21年1月15日付のニュースリリースによれば400社を超えている。そのリストの中には米デーナ(Dana)、米イートン(Eaton)、スウェーデン・オートリブ(Autoliv)といった伝統的な自動車部品メーカーや、中国の大手バッテリーメーカーである寧徳時代新能源科技(CATL)、独インフィニオン テクノロジーズ(Infineon Technologies)、スイスSTマイクロエレクトロニクス(STMicroelectronics)などの有力な半導体メーカーに加え、NTT、ローム、アドヴィックス、ブリヂストン、日本電産といった日本企業も含まれている。鴻海はこれらアライアンスパートナーの技術を結集して競争力のあるEVプラットフォームを造り上げようとしている。これは従来の自動車産業にはない、まさにIT業界的な発想といえる。

 既に鴻海のEV事業は一部具体化してきている。21年1月には中国の浙江吉利控股集団とEVの新会社を折半出資で設立すると発表したほか、中国新興EVメーカーの拝騰(バイトン)とは同社が22年から量産を計画するEV生産を支援する戦略提携を発表した。21年2月には米国の新興EVメーカーであるフィスカー(Fiscar)ともEVを共同開発し、鴻海が23年から25万台規模で量産することで基本合意した。そして21年3月には北米にEV工場を建設することを明らかにした。

 テスラも先に触れたようにソフトウエアやパワートレーン、電池を他社に供給する用意があると表明しており、将来はEVプラットフォームの供給に踏み切る可能性がある。完成車メーカーだけではない。独ボッシュ(Bosch)も車体やエンジン部品を手掛ける独ベントラー・オートモーティブ(BENTELER Automotive)と組んでEVプラットフォームを開発した。電動パワートレーンで攻勢をかける日本電産も、25年にEVプラットフォームに参入することを表明している。EVプラットフォームは「群雄割拠」の時代に入ったといっても過言ではない。

ボッシュが開発したEVプラットフォーム。アンダーボディーやサスペンションなどの機械部品はベントラーと協業して開発した。
ボッシュが開発したEVプラットフォーム。アンダーボディーやサスペンションなどの機械部品はベントラーと協業して開発した。
(写真:ボッシュ)
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