NFTで変わる顧客とのコミュニケーションの在り方

 そしてもう1つの狙いはNFTの活用による顧客とのエンゲージメント構築である。NFTも仮想通貨などと同様、投機的要素で注目されることが多いのだが、技術としてはあくまで所有者の唯一性を証明できる点がポイントとなっている。

 そこで今回の取り組みでは、NFTを使ってデジタルデータをリアルな場所で配布し、物理的なモノの代わりにノベルティーとして活用することを目指している。さらに、「その人しかデータを所有していない」という仕組みを生かして、NFTのデータを通じ顧客とコミュニケーションを取る仕組みを実現するというのも、大きなポイントとなる。

 先にも触れた通り今回の施策には、NFTデータ所有者に後から通知が届いて来訪を促すなどの取り組みがあり、その送り先はメールアドレスなどではなく、NFTのデータが基準になるとのこと。実は先のアンケートでは個人情報やメールアドレスなどを収集しておらず、NFTの活用によって顧客に手間や不安を与えることなく、それでいて継続したコミュニケーションにつなげることを期待している様子がうかがえる。

今回の施策で入手できるNFTのデータは金魚のカードになる。所有している人には今後アートアクアリウム美術館GINZAからの通知が届く。写真は2022年8月31日、同施設内にて筆者撮影
今回の施策で入手できるNFTのデータは金魚のカードになる。所有している人には今後アートアクアリウム美術館GINZAからの通知が届く。写真は2022年8月31日、同施設内にて筆者撮影
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 そこで1つ気になるのは、データを他の人に譲渡した場合である。今回使用するNFTはオープンなブロックチェーンのプラットフォームの1つ「Polygon」を使用していることから、配布されたデータを他の人にデータを譲渡することも可能だという。通知はデータを基準として送られることから、通知はデータを譲渡した相手に届くようになるとのことだ。