周辺機器の投入でも課題が残るiPhoneへの対応
ただ日本市場を振り返ると、現在以上にNreal Airの販売を拡大するには課題が非常に多いようにも感じる。最大の課題は日本市場の特性上、Nreal Airに対応するスマートフォンの利用者自体が少ないことだ。
Nreal Airは小型化を実現するため、機能的に見れば加速度センサーなどが付いたディスプレーという割り切った設計を採用しており、実際にコンテンツなどを利用するには接続したスマートフォン上で動作する「Nebula」というアプリが担っている。だがそのNebulaは現状Androidでしか利用できず、しかも快適に動作させるにはスマートフォン側に高い性能が必要なので、対応するのは一部メーカー製のハイエンドモデルに限られている。
一方でiOS版のNebulaアプリは今のところ提供されておらず、iPhoneの利用者が圧倒的に多い日本市場で販売を伸ばすにはその点が大きな壁となってくる。そこでエンリアル側もこの問題を解決する一手を打ち出しており、今回の戦略発表会に合わせて新たに周辺機器「Nreal Adapter」の販売も発表している。
これはHDMI端子に接続したデバイスの映像をNreal Airに直接映し出せる機器。コンシューマーゲーム機などの映像を出力することも可能だが、米Apple(アップル)が販売しているiPhoneの映像をHDMI経由で出力できる「Lightning - Digital AVアダプタ」がぴったりはまるデザインとなっているなど、iPhoneでの利用を強く意識していることが分かる。
ただNreal Adapterを使って利用できるのは、あくまでiPhoneなどの画面をそのままNreal Airに映し出すことだけ。Nebulaアプリで利用できる機能、例えば空間内に複数のウィンドウを設置して複数のWebサイトや動画などを同時に見られる「AR Space」は利用できない。現状、Nreal Air利用者の多くがAR Spaceを使っていないことから、現在の利用スタイルを考えればNreal Adapterの機能で十分ともいえるのだが、今後ARを活用したアプリやサービスが増えてくれば機能面で不足感が出てくることだろう。
一方で、iOS版Nebulaアプリの開発に関しては、Androidとは違ってiOS側の技術的制約があり開発が進めづらく、しかも世界的に見ればAndroidのほうがシェアが大きいこともあって、あまり積極的に開発に取り組んでいるわけではない様子だ。そうした状況が長く続くようであれば、iPhone利用者が多い日本での優位性が崩れる可能性もあるだけに、iPhoneでの課題解決に積極姿勢を見せられるかが同社の事業の今後を占う上でも重要なポイントになってくるといえそうだ。
フリーライター
[日経クロステック 2022年9月5日掲載]情報は掲載時点のものです。

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