オープンループは交通系ICカードを置き換えるのか

 一連の取り組みから、オープンループが国内で徐々に拡大傾向にあることは確かだろう。となると気になるのは、オープンループは交通系ICカードの市場を奪うのか、という点だ。

 ただ先のイベントで、三井住友カードやビザの関係者からは一同に、オープンループが既存の交通系ICカードと対立する排他的なものではなく、共存するものだとの声が聞かれた。実際、先に触れた南海電気鉄道や茨城交通の事例を見ても交通系ICカードを排除しているわけではなく、オープンループをはじめとした複数の方式への対応を重視している。

 またオープンループを国内で広く普及させる上では課題も少なからずある。1つはstera transitで対応するクレジットカードの国際ブランドが、現在のところVisaのみだということ。他の国際ブランドへの対応は2023年3月ごろとしているが、日本ではJCBブランドの利用も多く、またインバウンド需要を考慮すれば中国銀聯の「銀聯カード」への対応も求められるだろう。それだけに幅広い国際ブランドへの対応は急がれるところだ。

stera transitが現在対応している国際ブランドはVisaのみで、他の国際ブランドへの対応は2023年3月を予定しているという。写真は2022年8月2日の「stera transitシンポジウム2022 summer」より(筆者撮影)
stera transitが現在対応している国際ブランドはVisaのみで、他の国際ブランドへの対応は2023年3月を予定しているという。写真は2022年8月2日の「stera transitシンポジウム2022 summer」より(筆者撮影)
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 そしてもう1つはNFCを用いているが故の認証速度の問題だ。改善が進んでいるとはいえ、FeliCaを用いた交通系ICカードと比べタッチから認証にかかる速度の遅さは、大都市圏での日常的な利用を考慮すると弱点だといえる。

 そうしたことからオープンループが国内で急拡大し、交通系ICカードを置き換えるとは現時点では考えにくい。だが導入する事業者の増加により、交通系ICカード以外の選択肢ができたことは大きな変化であるのも確かだ。交通系ICカードの低コスト化と地方での拡大が進まなければ、オープンループによって将来的に交通系ICカードは地方から地盤沈下が起こる可能性も十分あり得ると筆者は見ている。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手掛けた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手掛ける。

[日経クロステック 2022年8月22日掲載]情報は掲載時点のものです。

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2/22ウェビナー開催、ウクライナ侵攻から1年、日本経済「窮乏化」を阻止せよ

 2022年2月24日――。ロシアがウクライナに侵攻したこの日、私たちは「歴史の歯車」が逆回転する光景を目にしました。それから約1年、国際政治と世界経済の秩序が音を立てて崩壊しつつあります。  日経ビジネスLIVEは2月22日(水)19時から、「ウクライナ侵攻から1年 エネルギー危機は23年が本番、日本経済『窮乏化』を阻止せよ」と題してウェビナーをライブ配信する予定です。登壇するのは、みずほ証券エクイティ調査部の小林俊介チーフエコノミストです。世界秩序の転換が日本経済、そして企業経営にどんな影響を及ぼすのか。経済分析のプロが展望を語ります。視聴者の皆様からの質問もお受けし、議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。 

■開催日:2023年2月22日(水)19:00~20:00(予定)
■テーマ:ウクライナ侵攻から1年 エネルギー危機は23年が本番、日本経済「窮乏化」を阻止せよ
■講師:小林俊介氏(みずほ証券エクイティ調査部チーフエコノミスト)
■モデレーター:森 永輔(日経ビジネスシニアエディター)
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