スマートフォンベースであることが吉と出るか

 実際、メタバースへの取り組みを積極化しようとしているのはグリーだけではない。特に最近、メタバースを巡って非常に大きな動きを見せ、注目されているのが米IT大手のフェイスブックである。

 同社は2020年に、VR空間でコミュニケーションをとれる「Facebook Horizon」のベータ版サービスを開始するなどしてメタバースに取り組む姿勢を見せていた。さらに2021年7月にはメタバース専業の事業部門を設置したことを明らかにし、本格的にメタバースへ注力する姿勢を示しているのだ。

 他にも国内外でメタバース、あるいはそれに類するサービスの開拓を積極的に進めるケースはいくつか見られる。そうした中にあってグリーはREALITYの特性を生かすことで、この分野での存在感を高めようとしているようだ。

 REALITYは先にも触れた通りVTuber、ひいてはキャラクター性の強い3Dアバターによるライブ配信に強みを持っており、それが国内だけでなく、北米や東南アジアなど海外でも人気を獲得して急速に利用者数を増やすことにつながっている。それゆえREALITYが持つキャラクター性の強さと、スマートフォンで利用できる手軽さによって、国内外でアニメキャラクターなどになじみのある層を取り込むというのがグリー側の狙いと考えられる。

グリーはメタバース事業の本格展開に向け、REALITYのアプリにアバター同士でコミュニケーションできる「ワールド」機能を期間限定で提供している
グリーはメタバース事業の本格展開に向け、REALITYのアプリにアバター同士でコミュニケーションできる「ワールド」機能を期間限定で提供している
(出所:グリー)
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 一方でメタバースがまだ黎明(れいめい)期にあり、その利用も先進層が主体である現状を考えると、自由度の低いスマートフォンをベースとしたプラットフォームは、自由度を強く求める傾向にある先進層からの支持が得られないというデメリットにつながる可能性もある。それだけに利用者の裾野がいつ、どれくらいのタイミングで広まるのか、そしてそれまで投資を継続できるかが、グリーに問われているといえそうだ。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手掛けた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手掛ける。

[日経クロステック 2021年8月23日掲載]情報は掲載時点のものです。

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