なぜ今、再びメタバースなのか

 ただメタバースといえば、先に触れたSecond Lifeが一時大きな注目を集めたが、その後急速に人気が落ちてしまったことでも知られている。にもかかわらず、グリーはなぜメタバースへの投資を加速しようとしているのだろうか。そこに影響しているのは、Second Life以降の動向変化であろう。

 Second Lifeが注目されたのは2006〜2007年ごろだったと筆者は記憶しているが、そのときから現在に至るまでに、コンピューターのハードウエア性能やネットワークの通信速度は飛躍的に向上。広大な3Dのオンライン空間で自由に行動するシステムの構築や、それを楽しむ環境を整備するためのハードルは大幅に下がっている。

 そうした状況にいち早く着目したのがゲームの分野であり、広大な空間で自由な行動を取れるオープンワールド型やサンドボックス型のゲームの人気が高まった。それがネットワークと結び付いたことで、ゲームをメタバースに近づける動きも出てきている。実際米Epic Games(エピックゲームズ)の人気ゲーム「フォートナイト」が2020年から「パーティーロイヤル」というメタバースに近い機能を搭載、その上で人気アーティストの音楽ライブを実施するなどして注目されたことは記憶に新しい。

 そしてもう1つ大きな影響を与えたのはVR(仮想現実)技術の発達である。ヘッドマウントディスプレーなどを活用した本格的なVRが利用しやすい環境が整ったことで、VRと相性の良いメタバースを取り入れたサービスが拡大するに至ったといえる。特に最近では米VRChat(ブイアールチャット)の「VRChat」に代表されるソーシャルVRサービスの人気が高まっており、メディアに取り上げられる機会も増えているようだ。

VR空間内でコミュニケーションができる「VRChat」は、日本語に対応しておらずサービス面で粗削りな部分も多いが、それにもかかわらず人気は拡大。VRChatを使ったイベントも現れている
VR空間内でコミュニケーションができる「VRChat」は、日本語に対応しておらずサービス面で粗削りな部分も多いが、それにもかかわらず人気は拡大。VRChatを使ったイベントも現れている
(出所:VRChat)
[画像のクリックで拡大表示]

 そうした複数の状況変化からメタバースを利用しやすい環境が整い、メタバースに対する抵抗感も薄れていった。それがメタバースの復活へとつながり、グリーのように事業として力を入れる企業が出てくる要因になったといえるのではないだろうか。

次ページ スマートフォンベースであることが吉と出るか