通信の進化は表現の枠を広げる

 だが説明会において、アーティストなどからは5Gとアートの組み合わせに関して期待する声が上がっており、5Gを見据えて今回の作品提供に至ったとするアーティストも見られた。そうしたことからアーティスト側も5Gに高い関心を寄せているのは確かなようだ。

2021年6月29日の「東京ビエンナーレ2020/2021」に出展するARアートの共同開発に関する記者説明会より。イベント中のトークでは、主催者やアーティストらから5Gに対する高い期待の声を聞くことができた。写真は同イベントより(筆者撮影)
2021年6月29日の「東京ビエンナーレ2020/2021」に出展するARアートの共同開発に関する記者説明会より。イベント中のトークでは、主催者やアーティストらから5Gに対する高い期待の声を聞くことができた。写真は同イベントより(筆者撮影)
[画像のクリックで拡大表示]

 5Gに期待を寄せる理由は、やはり従来より高い通信性能に尽きるだろう。コンピューターを活用するアーティストからすると、コンピューター側の性能の限界から表現できる内容の限界が制限されてしまうという課題があった。それを乗り越える上で通信の性能進化は重要になってくる。特にコンピューターの主体がクラウドへと変化した現代においては、通信性能の向上によって多くのデータを遅延なくやり取りできることが重要となる。

 今回のイベントに参加した開発者ユニット「AR三兄弟」の川田十夢氏は、12年にわたってARを活用した表現に取り組んできた経緯を踏まえ、今回出展する自身の作品について「5Gへの流れがないと、こういう表現はできない。(5Gの)通信インフラがないとできないことにチャレンジしている」と話している。5Gという高性能インフラが登場したことが、従来の枠を超えた表現をしようという意欲をかき立てているようだ。

 しかも5Gは今後、スマートフォンにとどまらない幅広いデバイスでの活用が期待されることから、アートがスマートフォンの枠を越え、新たな表現をもたらすかもしれない。通信インフラの進化による新しい表現が待ち望まれている。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手掛けた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手掛ける。

[日経クロステック 2021年7月12日掲載]情報は掲載時点のものです。

日経クロステックは、IT、自動車、電子・機械、建築・土木など、さまざまな産業分野の技術者とビジネスリーダーのためのデジタルメディアです。最新の技術や法改正、新規参入者や新たなビジネスモデルなどによって引き起こされるビジネス変革の最前線をお伝えします。

この記事はシリーズ「日経クロステック」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。