KDDIと三井物産は2022年6月9日に新会社「GEOTRA」(ジオトラ)の設立を発表、KDDIが持つ携帯電話利用者の位置情報に、三井物産が持つ都市開発の知見を組み合わせて都市のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するという。コロナ禍で注目された人流データをはじめとして、携帯電話事業者が持つデータを活用したビジネスは着実に広がりを見せつつあるが、課題はないのだろうか。
KDDIが三井物産と都市DXの新会社を設立
携帯電話事業者はここ最近、政府主導の料金引き下げにより通信料収入の増加が見込めなくなったことから、通信料収入の落ち込みを他の事業で補うことに力を入れている。その1つに挙げられるのが法人事業であり、通信やデジタル化で培ったノウハウを生かして企業のDX化を推し進めるソリューションを提供し、それを事業の柱として育てようとしているのだ。
そして2022年6月9日、その法人事業強化に関する取り組みを新たに打ち出したのがKDDIである。同社は三井物産と共同で発表会を実施し、両社で新会社の「GEOTRA」(ジオトラ)を設立すると発表したのだ。
ジオトラは都市のDXを推進することを目的に設立された企業である。具体的には三井物産が持つ都市開発のノウハウと、KDDIが持つデータと技術を活用し、都市の人流を可視化・分析してその将来を予測するプラットフォームを、企業や自治体などに提供。スマートシティーの実現など都市開発の意思決定を支援するのが事業の主な目的となるようだ。
実はKDDIと三井物産は2021年3月、携帯電話の位置情報とAI技術を活用して細かな人流を把握する「次世代型都市シミュレーター」の開発を発表しており、この1年で様々な実証などを進めてきた。その成果がジオトラの設立による事業化となるようだ。
ここで人流を把握する上で大きな役割を果たすのが、KDDIが持つ携帯電話利用者の位置情報データである。KDDIをはじめとした携帯電話事業者は、全国にいる自社携帯電話利用者の位置情報データと、それを基にした人流データを保有していることから、近年ではそれを企業や自治体などに提供し、様々な用途に活用する取り組みを進めている。
中でも代表的な事例となるのはコロナ禍での人流把握であろう。新型コロナウイルスの感染が深刻化し、緊急事態宣言が発令された2020年以降、人流抑制の効果を把握するため政府などから携帯電話事業者に対して人流を集計したデータの提供が求められ、それがメディアに連日取り上げられるなどして話題となったことは記憶に新しい。
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