キャンペーンより重要になるデータ活用マーケティング

 決済手数料が有料化となる今後、QRコード決済事業者は手数料のデメリットを上回るメリットをいかに店舗側に提示できるかが、非常に重要になってくるだろう。

 これまでの事業者の動向を振り返ると、店舗側にとって導入の大きなメリットとなっていたのは、大規模なキャンペーン施策による集客だった。今後も同種の施策は実施されるだろうが、一方で以前の反省もあって、かつてのような大規模な還元キャンペーンの実施は見込めなくなっている。それだけに、キャンペーン頼みの集客には限界もある。

事業者の再編が進んだ2020年以降も、QRコード決済の大規模キャンペーンは継続的に実施されているが、その還元額はかつてほど大きくはない。写真は2020年1月の「PayPay新キャンペーン発表会」より(筆者撮影)
事業者の再編が進んだ2020年以降も、QRコード決済の大規模キャンペーンは継続的に実施されているが、その還元額はかつてほど大きくはない。写真は2020年1月の「PayPay新キャンペーン発表会」より(筆者撮影)
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 一方、かつていくつかの事業者が店舗側に対するメリットとして打ち出しながら、まだあまり効力を発揮できていないように感じるのが、QRコード決済で得たデータを活用したマーケティング施策である。携帯大手各社が持つIDを軸に、決済で得たデータを他の行動データと結び付けて分析し、リピート購入などにつなげるマーケティングへの活用は、以前から注目されていた。

LINE Payはかつて、LINE PayのデータとLINEが持つ顧客基盤などを生かすことにより、中小店舗の販売促進などマーケティング拡大につなげることを打ち出していた。写真は2018年7月30日に実施された「LINE Pay QR/バーコード決済普及施策勉強会」より(筆者撮影)
LINE Payはかつて、LINE PayのデータとLINEが持つ顧客基盤などを生かすことにより、中小店舗の販売促進などマーケティング拡大につなげることを打ち出していた。写真は2018年7月30日に実施された「LINE Pay QR/バーコード決済普及施策勉強会」より(筆者撮影)
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 だが少なくとも現時点で、各社の集客施策として明らかに目立つのはキャンペーンである。決済データを活用したマーケティングの具体的な成功例はあまり出てきていないように見える。

 それでもソフトバンクはLINEを実質的な傘下に加えてデジタルマーケティング活動に力を入れることを表明している。また前回触れたKDDIとmenuの提携でも、ID連携によって両社のデータを活用したマーケティングを推し進める考えが示されている。各社が持つデータをマーケティングに生かす取り組み自体は、水面下で進められている様子が見て取れる。

 それだけに今後は、決済で得たデータを活用したマーケティング施策の成功例をどれだけ生み出せるかが、決済手数料無料化の終了後にQRコード決済の店舗利用を拡大する上で重要なポイントになってくるはずだ。現金決済への揺り戻しを起こさないためにも、明確な実績を出せる取り組みを急ぎ進める必要があるだろう。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手掛けた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手掛ける。

[日経クロステック 2021年6月21日掲載]情報は掲載時点のものです。

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