新OSによる反転攻勢でアップルの牙城を崩せるか

 そして今回の動きは、グーグルがスマートウオッチで攻めに転ずる準備が整ったことも示している。グーグルはここ最近、スマートウオッチなどウエアラブルデバイスを強化する動きを進めており、2019年には米Fossil Group(フォッシルグループ)のスマートウオッチ関連知的財産、そしてウエアラブルデバイス大手の米Fitbit(フィットビット)を買収している。

 一連の買収によってハードウエアや、スマートウオッチで重要になっている健康管理プラットフォームは入手できたが、OS自体の改善が進んでいなかった。それゆえ今回のサムスン電子との連携で、ようやく空いていたピースを埋めるに至ったといえる。

 そして新OSによるスマートウオッチの強化でグーグルが目指すのは、やはりこの分野で圧倒的なシェアを持つアップルの牙城を崩すことだろう。その先にあるのは、スマートウオッチから取得した身体情報をキーとして、健康管理から医療へとビジネスを広げることではないかと筆者はみる。

統合された新OSではスマートウオッチとしての体験価値向上に加え、健康やフィットネスに関する体験価値向上も挙げられている。画像は米国時間の2021年5月18日に実施された「Google I/O 2021」のスクリーンショット
統合された新OSではスマートウオッチとしての体験価値向上に加え、健康やフィットネスに関する体験価値向上も挙げられている。画像は米国時間の2021年5月18日に実施された「Google I/O 2021」のスクリーンショット
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 既にApple Watchや、海外で販売されているGalaxy Watchは、eSIMが搭載されスマートフォンから独立して通信ができるのに加え、一日中装着して身体情報を取得し、健康管理に役立てる仕組みが整えられている。そうしたことを考えれば、今後スマートウオッチは外出時だけでなく、自宅でも常時装着するデバイスとして生活の中での重要性が今まで以上に高まると考えられる。

 そうした時代にアップルの独走を許せば、健康・医療に関連するITサービスの分野でグーグルは大きな後れを取ることとなる。それだけに一連の施策からは、グーグルがスマートウオッチでの巻き返しに必死な様子が見えてくるし、それによって今後スマートウオッチの分野でどれだけアップルを猛追できるのかが問われるだろう。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手掛けた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手掛ける。

[日経クロステック 2021年5月31日掲載]情報は掲載時点のものです。

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