クローズドであることの善しあし

 先行するサムスンやアップルのスマートタグに共通して言えることは、自社のスマートフォンでしか利用できない専用デバイスだということ。スマートフォンのOSをオープン化していないアップルだけでなく、オープンなAndroidを採用しているサムスン電子までもが、スマートタグのシステムをクローズドな扱いとしている点は気になる。

 そしてここ最近の業界動向を見ると、他社がスマートタグを提供する場合も、その流れに追随する可能性が高いと考えられる。Android標準のシステムでUWBなどへの対応が進んでいないことも理由として挙げられるが、より大きな理由として考えられるのは「囲い込み」だ。

 というのもここ最近、これら2社以外にもスマートフォンだけでなく、スマートウオッチやスマートバンド、ワイヤレスイヤホンなどの周辺デバイスに力を入れるメーカーが増えている。特に2019年ごろからその傾向を強めているのが中国メーカーで、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)や広東欧珀移動通信(オッポ)などが相次いで周辺デバイスの投入に力を入れ、スマートフォンを軸とした独自のハードウエアによるエコシステムを構築しようという動きを見せているのだ。

 その背景にあるのは、既に新興国でも多くの国でスマートフォンが普及しており、スマートフォンだけでは今後大きな成長が見込めなくなっていることだろう。自社スマートフォンとの連係に優れた周辺デバイスを増やし、利便性で顧客を囲い込む傾向が強まっていることから、スマートタグもそうした施策の一環として活用される可能性が高い。

 そして先行する大手2社がクローズドな方向性を打ち出していることを考えれば、後続の企業も同様の策を取る可能性が十分考えられる。ただクローズドであることは、自社の独自技術やリソースをふんだんに活用できるというプラスの面もあるのだが、自社スマートフォンユーザーだけにターゲットを絞ってしまうデメリットもある。

 一方で、既存のスマートタグ事業者は特定デバイスに依存しないオープンな立ち位置を獲得していることから、UWBのような新技術は取り込みにくいデメリットはあるが、幅広い顧客をターゲットにできる点が引き続き強みとなる。実際MAMORIOはその立ち位置を生かして、パソコンをMAMORIOとして機能させる「MAMORIO PC」をNECパーソナルコンピュータと共同開発、同社製のノートパソコンに搭載する取り組みを実施している。

MAMORIOはNECパーソナルコンピュータと「MAMORIO PC」を共同開発、それを同社製の「LAVIE Pro Mobile」などに搭載することで利用拡大を図る取り組みを進めている
MAMORIOはNECパーソナルコンピュータと「MAMORIO PC」を共同開発、それを同社製の「LAVIE Pro Mobile」などに搭載することで利用拡大を図る取り組みを進めている
(出所:MAMORIO)
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 故にAirTagの優位性が非常に高いからといって、それだけでスマートタグの市場を制圧できるとは限らないというのが筆者の見方である。特定の企業に依存しないオープンな立ち位置をどこまで生かせるかが、スマートタグ事業者がスマートフォンメーカーに対抗する上で重要なポイントになってくるといえそうだ。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手掛けた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手掛ける。

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