厳密に線引きできるわけではないが、60歳ぐらいだろうか。何の話かと言うと、ある資質を持つ経営者の年齢だ。60歳ぐらいを境にして、それより上の年代なら「俺はITが分からない」と公言するようなITオンチの経営者が多く、それ以下になるとITの重要性を理解している経営者が増えてくる。

 おっと、いきなり訂正で恐縮だが、今や「俺はITが分からない」などと公言する経営者はいなかったな。何せ世間は今、空前のDX(デジタルトランスフォーメーション)ブーム。特に大企業の経営者なら誰も彼も「我が社のDX」を熱く語らなければいけないから、口が裂けても「ITが分からない」とは言わないはずだ。なので、「60歳より上の年代の経営者には隠れITオンチが大勢いる」と訂正しておこう。

 では、経営者のIT理解度にそんな傾向があるのはなぜか。シニアになればなるほど、ITに対する理解度が落ちるからではない。60歳の私が言うのだから、それは間違いない。ITオンチか否かを分けるのは、若い頃にどれだけITに接触できたかである。

 現時点で50代の人たちは、学生時代には既にパソコンなどが出回っており、理系ならプログラムを組んだことがある世代だ。文系であっても20代の後半には職場にパソコン導入が進み、パソコンを使って仕事をするのが当たり前になった。そして30代でインターネットの爆発的普及に遭遇した。で、今のデジタルサービスに通じるようなEC(電子商取引)やネットマーケティングに、若手マネジャーとしてチャレンジした人もいる。

 一方、60代以上の経営者は高齢になればなるほど、そんな経験がない。職場にパソコン導入が進んだ頃には、既に管理職の立場。「1人1台」ということで部下には皆パソコンを使わせたにもかかわらず、「(パソコンで)資料をつくるのは管理職の仕事ではない」などと理屈を付けて、パソコンに触れようともしなかった人は数多い。で、役員になって秘書がつくと、パソコンは当然、秘書任せ。その頃には既に普及していた電子メールも秘書に読み書きさせ、今に至る。そんな「生きた化石」の経営者もいる。

 何でこの「極言暴論」でこんな話を始めたかというと、今がまさに社長交代の季節だからだ。日本の大企業はこれまで年功序列で社長が決まる傾向があり、外国の企業に比べて経営者の新陳代謝が悪かった。なので、新社長の年齢を特に注視しているのだが、大企業も50代の社長が次々と誕生している。そうなれば今まで書いてきたように、生きた化石の経営者、隠れITオンチの経営者はどんどん減り、本当にITの重要性を理解する経営者が増える。何とめでたいことではないか。

続きを読む 2/4 「若い頃にITに直接触れた最初の世代」が社長に到達

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