機能を絞って“大画面で低価格”を重視
ただエンリアルでは、既に同種のARデバイス「NrealLight」も提供しており、KDDIから既に販売されている。しかもNrealLightはNreal Airより性能が高い。例えばNreal Airのセンサーは3DoF(Degrees of Freedom)、つまりデバイスの回転の動きしか認識できないのに対し、NrealLightは回転に加え前後左右や上下の動きも認識する6DoFに対応しており、より移動に関する自由度が高い。
加えてKDDIはこれまで、NrealLightの高い性能を生かして様々なARアプリケーションを活用したイベントを実施してきた。それゆえ高度なAR体験を得るのであればNrealLightのほうが有利だといえる。
だがエンリアルは機能を絞ったNreal Airをコンシューマー向けに販売するに至っている。その理由はARデバイスそのものがまだ発展途上であり、現時点でARに求められている要素が限定的だということだろう。確かに現時点で本格的なARコンテンツを体験できるデバイスを購入しても、肝心のコンテンツやサービスがそろっていないという問題がある。
そこでNreal Airは、装着すると現実にはない大きなスクリーンで映像などを視聴できることに集中し、NrealLightより機能をそぎ落として軽量化したり、価格を抑えたりするなど利用のハードルを下げることに重点を置いている印象が強い。実際KDDIの「au Online Shop」での販売価格を見ると、NrealLightが6万9799円(税込み、以下同じ)なのに対し、Nreal Airは3万9799円と、3万円も安いことが分かる。
そうしたことからNreal Airは、ある意味ARが過渡期にある現状に最適化された製品ともいえ、賞味期限はあまり長くないようにも感じてしまう。ただ販売面を考慮するならば、目的がシンプルであるほうが利用しやすく、また売りやすいのも確かなだけに、ビジネス面を考慮すれば適切な判断だったといえるのかもしれない。
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