実運用を考えると課題は少なくない

 自律走行できるロボットなどを活用した配送の実証実験は、過疎地などを対象とした屋外向けのものが多い。だが屋内でも病院や工場など、様々な施設にコンビニエンスストアなどの屋内店舗が設置されているケースがある。セブン‐イレブン・ジャパンの担当者によると、具体的な数を把握しているわけではないが、一定のボリュームはあるとのことで、ロボットによる屋内での配送ニーズも少なくないとみているようだ。

 ただ実証実験の内容を見ると、まだ課題が少なからずあるようにみえる。特に難しさを感じるのが、今回の実証実験の売りでもあるエレベーターとロボットの連係だ。東京ポートシティ竹芝オフィスタワーは2020年9月にオープンした新しい施設で、あらかじめエレベーターにVille-feuilleが導入されていたことから連係がしやすかったといえる。

 だが多くの建物にはそうした仕組みが整っておらず、実際に連係するとなればエレベーターに何らかの改修が必要になるだろうし、そのためのコストを誰が負担するのかという疑問も湧く。今回はあくまでも実証実験であり、実運用に関しては今後検討していくことになるというが、ロボットの導入だけでは対処できない課題が出てくるのは悩ましいところでもある。

 また今回の実証実験で用いられていたRICEは1台のみであった。現在は同じフロアの人たちが“まとめ買い”するという対応もなされているというが、混雑時に同時に多くの人が利用できないことを考えると、実運用では複数台のロボットを用意することが理想だろう。

 ただその場合はコスト面での課題に加え、システム的に複数台のロボットを同時に、かつスムーズにコントロールできるかという課題も浮上してくる。今回はそうした部分の実証実験は実施されていないだけに、導入に向けては大きな課題となるだろう。

今回の実証実験で運用されているRICEは1台のみ。混雑時の対処を考慮すると複数台の運用が望ましいが、複数台でのスムーズな運用ができるかは明らかにされていない。写真は2021年4月20日にセブン‐イレブン・ジャパンらが実施した自律走行型ロボットによる商品配送の実証実験より(筆者撮影)
今回の実証実験で運用されているRICEは1台のみ。混雑時の対処を考慮すると複数台の運用が望ましいが、複数台でのスムーズな運用ができるかは明らかにされていない。写真は2021年4月20日にセブン‐イレブン・ジャパンらが実施した自律走行型ロボットによる商品配送の実証実験より(筆者撮影)
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 屋内での自律走行ロボットによる配送は、公道を通らないことから導入面でのハードルは比較的低く、より早期に実現できると考えられる。だが実用性を高めるためには用途や運用面での工夫がまだまだ必要だとも感じる。今回の実証実験で得た成果を踏まえ、より多様なシーンに対応できる配送システムの実現に期待したい。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手掛けた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手掛ける。

[日経クロステック 2021年5月10日掲載]情報は掲載時点のものです。

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