1年で切れる運行許可、事業継続に求められる法改正

 ただmobiのサービスを拡大する上で、やはり問題となってくるのは既存の交通サービスとの衝突だ。とりわけmobiは、都市部での移動をカバーする領域が近く、競合になりやすいと見られているタクシー業界からの反発が根強くあるようだ。

 この点について村瀬氏は、mobiが「バスとタクシーの間」のサービスであると説明。相乗り型で近距離を回遊する仕組みなので移動にかかる時間は長くなるなど、タクシーと比べればデメリットもあるとするが、一方でそうした新しい移動の需要が世の中にすることも確かだと村瀬氏は話しており、現在mobiを提供中のエリアで様々な検証をしながら、他の移動手段との連携を進めていくことが重要だとしている。

2022年4月21日に実施されたCommunity Mobility設立発表会に登壇する村瀬氏。mobiは他の公共交通の間を埋めるサービスであるとし、公共交通との連携も積極的に進めていく姿勢も示していた。写真は同発表会より(筆者撮影)
2022年4月21日に実施されたCommunity Mobility設立発表会に登壇する村瀬氏。mobiは他の公共交通の間を埋めるサービスであるとし、公共交通との連携も積極的に進めていく姿勢も示していた。写真は同発表会より(筆者撮影)
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 そしてもう1つ、より大きな問題となるのが事業の継続に向けた法制上の課題を抱えていることだ。実際、mobiのサービスは道路運送法第21条に基づき、各エリアでの乗合運送許可を得て運用されており、その期限は原則1年以下という点は現在も変わっていない。

 それゆえサービス提供期限は1年に限定され、最も早くサービスを開始した東京都渋谷区や京都市京丹後市などでは2022年6月末で期限が切れてしまう。もちろん何らかの形で再度許可を得ることができれば、再び1年間事業継続はできるだろうが、そのためには自治体や各地域の公共交通事業者などからの理解を得る必要がある。サービス開始から1年後に事業継続できるとは限らないという不安定な状況にある現状が、極めて大きな経営課題となっていることは間違いない。

 しかも事業継続のため毎年許可を得なければいけない状況が今後も続くようでは、AIオンデマンド交通の継続的な事業化そのものが難しいように思える。安定した事業の継続に向けては都度許可を得なくても事業展開ができるよう、法律を変えていく働きかけが欠かせないのではないだろうか。

 この点について村瀬氏は個人的な意見と断りながらも、AIオンデマンド交通の草創期である現在は、各地域でのニーズや影響などを見極める上でも現時点では1年間の実証は必要だとし、今ある法律の中で制度整備していくことが必要だと話している。その上で年数がたち、AIオンデマンド交通の市場性が明らかになったときに法制面での具体的な課題が見えてくることから、その段階で法律に手を加えていくことになるのでは、という見解を述べている。

 とはいえエリア拡大に伴い、再度許可が得られず事業継続できない地域が続出したとなれば、mobiの信頼性自体が大きく損なわれる事態にもなりかねない。様々な方面からの反発も予想されるが、国土交通省が「日本版MaaS」としてAIオンデマンド交通の実用化に向けた取り組みを推し進めている現状を考慮するならば、都市部でのサービス展開を含めた法制化に向け、踏み込んだ取り組みを行政主導で早期に進めていく必要があるのではないかと筆者は考える。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手掛けた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手掛ける。

[日経クロステック 2022年5月2日掲載]情報は掲載時点のものです。

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