江ノ島電鉄は2023年4月15日、三井住友カードやビザ・ワールドワイド・ジャパンらと共同で、タッチ決済対応のクレジットカードやスマートフォンなどを用いた鉄道乗車を開始した。

 地方の鉄道会社を中心に、クレジットカードのタッチ決済による鉄道乗車への対応が進みつつある。だが交通系ICカードが広く普及している首都圏の鉄道会社がタッチ決済を導入する理由はどこにあるのだろうか。

首都圏で初めてオープンループを全面採用

 NFC(Near Field Communication)に対応したクレジットカードや、同方式に対応する「Apple Pay」「Google Pay」などのスマートフォン決済を用いたタッチ決済は、日本に登場してから日が浅い。このため普及や認知はそれほど進んでいない。

 だが海外ではかなり普及しているようだ。筆者も「MWC Barcelona 2023」の取材でスペインのバルセロナを訪れた際には、レストランから自動販売機まで大半の決済をタッチ決済で済ませることができた。

 さらにその後訪れたシンガポールでは、タッチ決済で公共交通を利用できる「オープンループ」にも対応していた。タッチ決済対応のクレジットカードなどがあれば地下鉄に乗れる。切符はもちろん、Suicaのような交通用のプリペイドカードを購入する必要さえなかった。

シンガポールでは地下鉄がタッチ決済に対応。改札のリーダーにタッチ決済対応のクレジットカードやスマートフォンなどをかざすだけで乗ることができる
シンガポールでは地下鉄がタッチ決済に対応。改札のリーダーにタッチ決済対応のクレジットカードやスマートフォンなどをかざすだけで乗ることができる
(写真:佐野 正弘)
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 オープンループは日本でも徐々に導入されつつある。既に地方を中心に幾つかの鉄道会社やバス会社が導入しているか、導入に向けた実証実験を進めている。

 一方でSuicaやPASMOなどの交通系ICカードが広く普及している首都圏の公共交通機関では、これまでオープンループを導入する動きは見られなかった。

 先駆けとなったのは東急電鉄だ。同社は2022年12月8日、タッチ決済やQRコードを活用した改札機の入出場に関する実証実験を2023年夏に開始することを発表した。

 そして冒頭で書いたように、神奈川県の江ノ島電鉄がより本格的なオープンループの導入を打ち出した。同社は2023年4月10日、タッチ決済対応のクレジットカードやスマートフォンなどによる鉄道乗車を2023年4月15日に開始することを、三井住友カードやビザ・ワールドワイド・ジャパン、ジェーシービーなどと共に発表したのだ。

 対象となるのは、江ノ島電鉄が運営する江ノ島電鉄線の全駅。江ノ島電鉄線は一般道路も走行する小規模な路線だが、人気観光地を通ることもあって知名度は高い。このためオープンループを全面的に導入するとなれば、一定以上のインパクトがあるだろう。

鎌倉や江ノ島など多くの観光地を通ることで人気の江ノ島電鉄線は、首都圏の鉄道会社では初めてオープンループを全駅に導入した。写真は2023年4月14日に江ノ島駅にて筆者撮影
鎌倉や江ノ島など多くの観光地を通ることで人気の江ノ島電鉄線は、首都圏の鉄道会社では初めてオープンループを全駅に導入した。写真は2023年4月14日に江ノ島駅にて筆者撮影
(写真:佐野 正弘)
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