強硬姿勢を崩さないアップルに逆風となるか

 独自の決済システムを導入して安定的に運用するには多くのハードルがあるだけに、今後グーグル以外の決済システムを導入する動きがアプリ開発者にどこまで広がるかは未知数な部分もある。だが今回のスポティファイとグーグルの契約を機として、特に規模が大きく独自の決済システム導入に前向きな大手のアプリ開発会社が、同様の契約へと動く可能性は非常に高いと考えられる。

 一方で、気になるのはもう1つのアプリストア運営者であるアップルの動きだ。アップルも韓国では法律に従って、App Store以外の決済システム導入を認めたとの報道がなされているが、それ以外の国や地域ではグーグルのような動きを見せているわけではない。

 もちろん既に発表されている、App Store外での決済手段を実現する取り組みは着実に進められているようだ。実際2022年3月30日には開発者に対し、電子書籍や動画などを視聴する「リーダーアプリ」で外部のWebサイトにリンクを設置することを認めるアップデートを実施した。これは2021年に日本の公正取引員会と合意に至った内容を実現するための施策である。

アップルは2022年3月30日、日本の公正取引委員会との合意に従う形で、リーダーアプリ開発者に対して外部Webサイトへのリンクを設置できる仕組みを提供、その受け付けも開始している
アップルは2022年3月30日、日本の公正取引委員会との合意に従う形で、リーダーアプリ開発者に対して外部Webサイトへのリンクを設置できる仕組みを提供、その受け付けも開始している
(出所:アップル)
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 ただ現在もなお、アップルは決済システムの開放には消極的とみられている。それゆえもし同社がこの問題に関して何らかの動きを起こすとすれば、韓国と同様の法改正をする国や地域が出てくる場合、あるいは現在進められている、アプリの決済システムや配信などを巡るエピックゲームズとの訴訟の結果、アップル以外の決済システム導入を求められた場合に限られるだろう。

 ただグーグルが決済システムに対して柔軟な姿勢を取るようになった現在、アップルが強硬な姿勢を取り続ければ各国の行政がより警戒感を強め、決済システムの開放だけでなく、アップルが最も恐れているであろうApp Store外でのアプリ配信を認めるよう求めてくる可能性も出てくるかもしれない。それだけに今後も、アプリストアを巡ってアップルがどのような判断を見せるのかは関心を呼ぶこととなりそうだ。

佐野 正弘(さの まさひろ)
フリーライター
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手掛けた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手掛ける。

[日経クロステック 2022年4月11日掲載]情報は掲載時点のものです。

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2/22ウェビナー開催、ウクライナ侵攻から1年、日本経済「窮乏化」を阻止せよ

 2022年2月24日――。ロシアがウクライナに侵攻したこの日、私たちは「歴史の歯車」が逆回転する光景を目にしました。それから約1年、国際政治と世界経済の秩序が音を立てて崩壊しつつあります。  日経ビジネスLIVEは2月22日(水)19時から、「ウクライナ侵攻から1年 エネルギー危機は23年が本番、日本経済『窮乏化』を阻止せよ」と題してウェビナーをライブ配信する予定です。登壇するのは、みずほ証券エクイティ調査部の小林俊介チーフエコノミストです。世界秩序の転換が日本経済、そして企業経営にどんな影響を及ぼすのか。経済分析のプロが展望を語ります。視聴者の皆様からの質問もお受けし、議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。 

■開催日:2023年2月22日(水)19:00~20:00(予定)
■テーマ:ウクライナ侵攻から1年 エネルギー危機は23年が本番、日本経済「窮乏化」を阻止せよ
■講師:小林俊介氏(みずほ証券エクイティ調査部チーフエコノミスト)
■モデレーター:森 永輔(日経ビジネスシニアエディター)
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