移行には利用者の裾野を広げる狙いも

 アマゾンジャパンのオーディブル事業部長 Japan Country Managerの逢阪志麻氏によると、現在の会員数はコイン制を採用した2018年8月から4.5倍に拡大しており、とりわけ直近の2年間ではその伸びが顕著になっているという。従来のAudibleのサービス範囲内でも堅調に会員を獲得できていた様子を見て取ることができる。

記者の取材に応える、アマゾンジャパンでAudibleの事業を担当する逢阪氏。写真は2021年26日に実施された「Amazonオーディブル 戦略発表会 2022」より(筆者撮影)
記者の取材に応える、アマゾンジャパンでAudibleの事業を担当する逢阪氏。写真は2021年26日に実施された「Amazonオーディブル 戦略発表会 2022」より(筆者撮影)
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 それだけに気になるのが、なぜ完全な聴き放題サービスへ移行する判断に至ったのかということだ。確かにオーディオブックも聴き放題となればユーザーメリットは大きいが、都度課金ではなくなる分ビジネス面ではマイナスの要素も大きいだけに、大幅な方針転換へと至った理由は関心を呼ぶところであろう。

 逢阪氏は大きく2つの理由を挙げている。1つはユーザーの視聴習慣が変化したことで利用時間が延びる一方、より多くのコンテンツを利用する傾向が強まっていることから、顧客のニーズに合わせて完全な聴き放題サービスへと移行したという。

 そしてもう1つはユーザーの拡大のためだ。そもそも日本ではオンラインでオーディオコンテンツを聴くという歴史が浅く、Audibleの会員数が増えているといっても映像配信サービスなどと比べれば規模は小さい。それだけにまだオーディオコンテンツに触れていない人に対して、完全な聴き放題という分かりやすい仕組みとすることで利用のハードルを下げる狙いも強いようだ。

Audibleはコイン制の導入以降会員数を4.5倍に伸ばすなど順調に成長してはいるが、今はオーディオコンテンツの利用者自体を増やし裾野を広げることが重要と考えているようだ。写真は2022年1月26日に実施された「Amazonオーディブル 戦略発表会 2022」より(筆者撮影)
Audibleはコイン制の導入以降会員数を4.5倍に伸ばすなど順調に成長してはいるが、今はオーディオコンテンツの利用者自体を増やし裾野を広げることが重要と考えているようだ。写真は2022年1月26日に実施された「Amazonオーディブル 戦略発表会 2022」より(筆者撮影)
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 最近では音楽配信サービスの「Spotify」がポッドキャストの拡充に向けて国内の音声クリエーター支援に乗り出すなど、競合事業者が音楽以外のオーディオコンテンツを強化する動きも出ている。だが国内におけるオーディオコンテンツ自体の盛り上がりがまだ大きく高まっているわけではないことから、逢阪氏も他社のそうした動きに対して「とてもいいことだと思う」と回答、当面は企業間の競争よりも市場を広げることの重要性が高いとみているようだ。

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