シャープやパナソニック傘下のShiftall(シフトール)などが、「CES 2023」に合わせて軽量のVR(仮想現実)用ヘッドマウントディスプレー(HMD)を相次いで発表し、注目を集めた。いずれもHMD側にバッテリーやコンピューターを搭載しないことで軽量化を図っている。一方で現在はそれらを内蔵したスタンドアローン型がVRデバイスの主流であることも確かだ。一連の内容からはオールインワンの利便性と軽さをいかに両立するか、メーカーが苦悩している様子が見えてくる。

パナソニック傘下企業が軽量VR HMDを投入

 米国時間2023年1月5日から米国・ラスベガスで開催された「CES 2023」。米国でのインフレや円安による航空・滞在費の高騰で筆者は今年も現地での取材がかなわなかったのだが、メーカーなどから現地での出展案内が多く届くなど、2022年以上にリアルイベントへの回帰が進んでいる印象を受けたことは確かだ。

 そのCES 2023で注目された分野の1つは、ソニーグループと本田技研工業(ホンダ)が共同出資したソニー・ホンダモビリティが「AFEELA」ブランドの電気自動車のプロトタイプを発表するなど、モビリティー分野がその1つに挙げられる。そしてもう1つ、新たに多くの取り組みが披露され注目されたのが、VR(仮想現実)やメタバースに関連するものだ。

 中でも最も分かりやすいのが、多くのメーカーが発表したVRのヘッドマウントディスプレー(HMD)の新製品やプロトタイプで、とりわけ国内企業がVR HMDに積極的な取り組みを見せたことが関心を呼んだようだ。そして各社が発表したVR HMDには、従来のHMDが抱える課題の1つとなっていた重さの解消に重点を置いている様子が見えてくる。

 その1つはパナソニック傘下のShiftallが発売を発表した「MeganeX(メガーヌエックス)」。これは2022年の「CES 2022」にも出展されたものだが、今回のCESでは2023年3〜4月ごろと具体的な発売時期を明らかにしたことが大きなポイントといえるだろう。

パナソニック傘下でVR関連デバイスを多く手掛けるShiftallは、「CES 2023」に合わせて軽量のVR HMD「MeganeX」などを発売すると発表している。画像は同社のプレスリリースより
パナソニック傘下でVR関連デバイスを多く手掛けるShiftallは、「CES 2023」に合わせて軽量のVR HMD「MeganeX」などを発売すると発表している。画像は同社のプレスリリースより
(出所:Shiftall)
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 MeganeXは年間2000時間以上メタバース内で過ごすようなヘビーユーザーでも快適に利用できることに重点が置かれており、ケーブル部分を除いて約320gという軽さを実現。それに加えてグラス型ながら額のパッドで支える構造とすることで、より快適な装着感を実現しているという。

 ちなみに同社は今回のCESに合わせて、ビジネス向けの「MeganeX Business Edition」も発表している。こちらは複数の人達で共用できるよう視力調整機能を搭載し、額ではなく鼻で支える構造とすることで付け外しをしやすくする仕様となっているようだ。

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