2023年に問われるのはサービスの質
ではポイント還元に頼ることができなくなった2023年、携帯電話各社はどうやって経済圏に顧客を取り込もうとするのだろうか。2022年の動きから推し量ると、サービス自体の質を高めるという本質に立ち返ることであるように思う。
そのことを象徴する動きをみせているのがNTTドコモだ。同社は2022年11月28日、映像配信サービス「dTV」を運営しているエイベックス通信放送を子会社化。さらに2022年12月13日には、井上尚弥選手とポール・バトラー選手による世界バンタム級4団体王座統一戦を独占配信している。負荷対策で急きょ配信を無料開放するなどのトラブルもあったが、海外の映像配信サービスに押され存在感が低下していたdTVへの関心を再び高めるには十分な効果があったといえる。
またソフトバンクは2022年にPayPay社を子会社化したことにより、金融事業を通信に並ぶ柱の1つと位置付け注力することを打ち出している。PayPayを軸に「PayPayカード」「PayPay証券」などグループのサービスの利用を広げ、ポイント還元から決済を軸とした金融事業の強化へと、サービスの質を追求しようとしている様子がうかがえる。
今後を考えると、楽天モバイルのプラチナバンド再割り当ての動向によっては携帯電話3社にさらなる負担がのしかかる可能性があり、行政の影響で主力の携帯電話事業で売り上げが一層減ることも十分考えられる。それだけに2023年は、携帯電話各社が経済圏ビジネスに一層大きな比重を移し強化を図ってくるだろう。
ただ4社が共に経済圏ビジネスに力を注ぐ状況では、サービス競争も激しくなっていくものと考えられる。とりわけ各社は成長が著しい金融・決済に重点を置いている。グループ内に銀行を持たないNTTドコモは、三菱UFJ銀行と提携して2022年12月12日よりデジタル口座サービス「dスマートバンク」を提供するなどサービスの均質化も進みつつある。
それだけに2023年の経済圏ビジネスを見据える上では、自社にしかないリソースを有効活用してサービスの独自性を高め、魅力を提供できるかという点が問われることとなりそうだ。
フリーライター
[日経クロステック 2023年1月16日掲載]情報は掲載時点のものです。
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