「ポイント改悪」の本質的原因は

 そして2022年に起こったポイント付与の大幅な変更は、実はeコマースだけにとどまらない。より多くの場面で経済圏ビジネスのポイント付与が改悪に向かう動きを見て取ることができたのだ。

 例えば、NTTドコモは会員基盤の「dポイントクラブ」で提供される特典を2022年6月に大幅に変更。dポイント加盟店でのポイント付与率に影響する会員ランクを上がりやすくした一方、NTTドコモ回線利用者に提供されていたポイント還元の仕組みが大きく変わった。以前はエントリーさえすれば契約年数に応じたポイントを取得できたのが、スマートフォン決済の「d払い」を利用しなければ特典が一切得られない仕組みへと変更されている。

NTTドコモがリニューアルした「dポイントクラブ」では、NTTドコモ回線の長期利用者向け特典が大幅に変更。「d払い」を利用しなければポイント特典が一切得られない仕様となった
NTTドコモがリニューアルした「dポイントクラブ」では、NTTドコモ回線の長期利用者向け特典が大幅に変更。「d払い」を利用しなければポイント特典が一切得られない仕様となった
(出所:NTTドコモ)
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 KDDIも同様に、2022年7月に「auポイントプログラム」を「au Ponta ポイントプログラム」へとリニューアルした際、ポイント獲得の裾野を広げることに力を入れる一方、au回線の長期契約者に付与するポイントは大幅に削減され、高いポイント還元を得るにはスマートフォン決済の「au PAY」を積極的に利用する必要がある仕様へと変更されている。

 こうした動きから見えてくるのは、経済圏ビジネスを大きく伸ばしてきたポイントの高還元率施策に限界が見えてきたことだ。激しい消耗戦で大半の企業が疲弊したスマートフォン決済では早々にポイント還元依存を減らす動きが出ていたが、それ以外の分野でもお得なポイント還元施策が急減しているのは確かだろう。

 その背景にはいくつかの要因があるだろうが、最も大きく影響しているのはやはり、行政主導で進められた携帯料金引き下げではないだろうか。2021年に各社が新料金プランを相次いで投入、急速に進んだ料金引き下げによって携帯3社の利益は年間で1000億円近く吹き飛ぶと予想されており、経営に大きなダメージを与えている。

 それにもかかわらず、先行投資が続く楽天モバイルを除けば、みな2022年度の通期業績予想で増収増益を達成するとしている。そのために確実な利益を出すには、事業拡大に加えてコスト削減を進める必要があり、それがポイント付与率の低下という形で消費者に影響を与えたといえそうだ。

総務省「競争ルールの検証に関するWG」第32回会合資料より。料金引き下げ影響を受け、携帯電話3社は2022年度の業績で利益がおよそ700億〜1100億円前後減少すると見込んでいる
総務省「競争ルールの検証に関するWG」第32回会合資料より。料金引き下げ影響を受け、携帯電話3社は2022年度の業績で利益がおよそ700億〜1100億円前後減少すると見込んでいる
(出所:総務省)
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