モノタロウで部品調達

 宇宙は真空で放射線も多いうえ、零下270度と特殊な環境。そのため衛星大手は専用の特殊な機器や部品を作り込むが、GITAIは別のアプローチのもの作りにトライしている。「真空やガンマ線試験に耐えられたらそれで合格」(中ノ瀬CEO)との発想で、パソコンなど一般的な製品に使われている民生品をかき集める。

 同社は産業部品や工具の通販サイト「モノタロウ」のヘビーユーザー。部品の外部委託は極力抑え、電子回路からモーターまで自前で生産、垂直統合で組み立てる。

 スタートアップならではの大胆さと機動力も。通信や制御システムは「絶対故障させないというより、故障してもバッファーを用意すれば有事にも対応できる」と割り切りの発想を併せ持つ。最初から完璧に作り込むことをよしとしない同社は、失敗をいとわずトライ&エラーをどんどん繰り返しながら完成に近づける手法を取っている。

中ノ瀬CEO率いる開発陣は約1年で要求通りのロボットを完成させた(写真=的野弘路)
中ノ瀬CEO率いる開発陣は約1年で要求通りのロボットを完成させた(写真=的野弘路)

 ソフトウエアの「アジャイル開発」に似たものづくりだ。そうしたGITAI流を貫いたことで、S1の引き渡しまでの期間はわずか約1年。もちろんNASAの厳しい審査はクリアしており、安全性のお墨付きを得ている。  

 元来、日本はロボット大国だ。産業用ロボットではファナックと安川電機を中心に世界シェアの6割弱を占める。サーボモーターやモーターの回転力をより強い力に変える減速機、ベルトや歯車といった要素技術は日本に一日の長がある。GITAIが得意とする「テレイグジスタンス」(遠隔存在)ロボも実は日本が生みの親。テレイグの提唱者は東京大学の舘暲名誉教授だ。 

大物エンジニアが次々集まる

 そうした土壌もあってGITAIには16人の社員のうち10人を博士出身者が占める。筆頭格がかつて一世を風靡したロボット開発集団SCHAFT(シャフト)創業者の中西雄飛氏だ。

 SCHAFTはグーグルが買収したものの、同社が開発から遠ざかり、最終的にソフトバンクグループの手に渡った。SCHAFTから離れた中西氏だったが、ロボット熱は冷めていない。中ノ瀬CEOの熱意にほだされGITAIに入社。宇宙でのミッションに心躍らせているようで、本社のラボに寝泊まりする日々だ。

 その中西氏の弟子にあたるのが、電動車いす「WHILL」のメカニカルエンジニアだった上月CTOだ。GITAIは機械工学から情報処理、電気制御まで今や「ロボティクスの梁山泊(りょうざんぱく)」と化している。

中西氏(左)はロボットの第一級エンジニア(写真=的野弘路)
中西氏(左)はロボットの第一級エンジニア(写真=的野弘路)

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