宇宙ロボット開発のスタートアップGITAI(ギタイ、東京・大田)には機械システムから情報工学まで多士済々が集う。8月には国際宇宙ステーション(ISS)に同社のロボットがお目見え。人に代わる船内作業の実証実験が始まる。世界で勝負できる日本の代表的技術であるロボティクス。その新境地をひらけるか。

 4月半ば、GITAIの上月豊隆最高技術責任者(CTO)は米ヒューストンにいた。「よろしくお願いします」。民間宇宙サービスの米ナノラックスの本社で担当者に引き渡したのは、ISSでの実証実験で使う汎用ロボットだ。

 ロボットは米スペースXのロケットに搭載され、8月半ばにはISSへ飛び立つ予定。課せられたのはこれまで人が担ってきたISS設備の建設や保守などを代替するミッションだ。

中ノ瀬CEO(左)と上月CTOは宇宙作業のコストを100分の1に引き下げることを狙う(写真=的野弘路)

宇宙作業は時給500万円

 「人にとって宇宙での作業はリスクもコストも重い。その課題を解決する」。GITAIの中ノ瀬翔CEO(最高経営責任者)は決意を語る。宇宙飛行士1人当たりのコストは年間400億円。時給換算なら500万円とべらぼうに高い。

 しかも連続して宇宙に滞在できる期間はせいぜい半年、トータルでも1人約2年だ。放射線が飛び交う宇宙空間は人体への安全性も高いとはいいがたい。

 人に代わるロボットが宇宙でも活躍できるようになれば、ISSのみならず衛星のメンテナンスサービスや、はては月面基地建設まで宇宙開発のスケールやスピードは一気に高まる。宇宙の省人化は「ブルーオーシャン」。GITAIはそこに飛び込む。

一騎当千のロボ

太陽光パネルを組み立てる
ゴムホースも取り付けられる
チャック付きパウチをあけて布も取り出せる

 宇宙ロボットはこれまで1つの作業に専念する特化型ロボットしかなかったが、GITAIの「S1」は世界初の汎用型だ。

 例えば太陽光パネル装置の取り付け。シャフトの組み立てからパネルの接合、ねじ締めまですべてこなす。直径26mmの工具を握って直径9.5 mm、長さ50mmのねじを機器に埋め込んだり、アームを360度多方向に操って複雑形状の部品を狭いエリアに組み付けたりもする。

 アンテナの設置からハッチの開け閉めなどお安い御用だ。圧巻はビニール製のチャック式パウチの開け閉めやゴムホースの取り付け。人間工学による握力や振動のセンシング技術は人と大差ない。一騎当千ならぬ1ロボット当千の働きに米航空宇宙局(NASA)の担当者も驚きを隠さない。

 GITAIはコントローラーで人が操作することもできるアバター(分身)型の半自律ロボを得意とする。だが、ISSで使うS1は機械学習も用いたプログラムで動く「自律型ロボット」。モノを認知し、状況を判断しながら行動する。高性能だけに高価と思いきや、中ノ瀬CEOは「とにかくコストにこだわった」と強調する。

続きを読む 2/3 モノタロウで部品調達

この記事はシリーズ「日本に埋もれる「化ける技術」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。