「全員一律」「職場内訓練(OJT)」「ジョブローテーション」で人を育て、その中で力をつけた人を登用するのが一般的だった日本企業。そうした人材活用では変化の激しい時代に対応できなくなってきた(人材活用ニューノーマル、画一的な育成が招いた限界)。そんな中、年次や役職にとらわれることなく、入社したばかりの新人に重要な役割を任せたのが事務機器大手のブラザー工業だ。

 2021年2月、名古屋市に本社を置く事務機器大手のブラザー工業で、自ら手を挙げた10人程度の社員が真剣なまなざしで“あるオンライン研修”を受講していた。

名古屋市瑞穂区にあるブラザー工業の本社

 開催されていたのは、AI(人工知能)を使うための初心者向けのプログラミング研修だ。需要予測や異常検知といったAI活用のテーマごとに、2018年末からほぼ毎月実施している。テーマに応じた活用手法を座学で学ぶだけでなく、講師が直接指導する形でプログラミング言語「Python(パイソン)」を使った演習にも取り組む。

 このオンライン研修を受けられるのは、製造技術や開発部門などブラザー工業の単体正社員。毎回10人程度と少人数で研修することもあり、すぐに募集枠が埋まってしまうという。

AI人材育成プロジェクトを推進

 ブラザー工業は佐々木一郎社長の大号令の下、「AI Everywhere.」を合言葉にAI人材を育成する全社プロジェクトを18年から推進している。社内サイトには専用ページが設置され、最新のAI技術やその活用事例を紹介。社内研修は全社員を対象にしたものだけでなく、ソフト開発者やマネジメント層、新入社員向けのものもある。事業部門などからの要望があれば、実際の現場の課題解決に向けたAI導入も支援する。開始から2年強が経過し、これまでに約500人が研修を受講したという。

ブラザー工業のAI人材育成専門ページのトップ画面。「AI Everywhere.」を掲げている

 機械や電子といった分野の技術者が多いブラザー工業が、なぜIT(情報技術)大手のようなAI人材育成の仕組みを確立できたのか。この育成プログラムを統括するソフト技術開発部の須﨑与一プロジェクト・マネジャーはこう打ち明ける。「大胆に人材を抜てきしたことが大きい」

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