丘の発掘に取り掛かったギルシュマンのチームが周囲の土を剥がすと、中からは階段状のピラミッドであるジッグラトが現れた。ギルシュマンは、この3層の構造物がもとは5層であり(頂上の神殿を含む)、かつての高さは推定50メートル以上と、現存する遺跡の2倍であったことを突き止めた。

 それはメソポタミア建築の傑作であった。メソポタミアのジッグラトは泥を焼成したレンガから作られているため、その大半は発掘された時点で激しく劣化している。しかしチョガ・ザンビールは例外だった。このジッグラトはメソポタミア地方以外では最大規模であり、保存状態も同種のものの中で最も良かった。

チョガ・ザンビールのジッグラトの頂上にある神殿を飾っていたテラコッタ製プレート。(ALAMY/ACI)
チョガ・ザンビールのジッグラトの頂上にある神殿を飾っていたテラコッタ製プレート。(ALAMY/ACI)

 ギルシュマンのチームは、チョガ・ザンビール遺跡で9年分の発掘シーズンを費やし、そこに残されたエラムの建造物を丹念に掘り起こしていった。複数の小さな神殿とそびえ立つジッグラトを囲む城壁のそばには、王族の居住区が設けられていた。

聖なる都市

 ジッグラトは、街の中心にある神聖な領域にそびえていた。ギルシュマンはこの場所から、母なる神ピニキルをはじめとするエラムの神々に捧げられた神殿を複数発掘している。この聖域の向こうには王族の居住区が広がり、煉瓦、漆喰、陶器、ガラスなどで華やかに装飾された屋敷が並んでいた。地下部分は、アーチ形天井の埋葬室になっている。

紀元前7世紀半ば、アッシリアの皇帝アッシュールバニパルの軍勢が、当時廃墟となっていたチョガ・ザンビールを略奪し、多くの財宝を持ち去った。それでもギルシュマンの発掘調査からは、屋敷や神殿で使われていた装飾品や家具が数多く見つかっている。この写真にある紀元前1300年頃に作られたテラコッタ製の塔の模型もその一例。(FRANCK RAUX/RMN-GRAND PALAIS)
紀元前7世紀半ば、アッシリアの皇帝アッシュールバニパルの軍勢が、当時廃墟となっていたチョガ・ザンビールを略奪し、多くの財宝を持ち去った。それでもギルシュマンの発掘調査からは、屋敷や神殿で使われていた装飾品や家具が数多く見つかっている。この写真にある紀元前1300年頃に作られたテラコッタ製の塔の模型もその一例。(FRANCK RAUX/RMN-GRAND PALAIS)

 このジッグラトは、エラムの主要二神であるインシュシナク(大地の神)とナピリシャ(スーサの神)に捧げられたものだ。これらの神を選ぶことにより、ウンタシュ・ナピリシャ王は、この新しい都市を地域の宗教的中心地という役割を超えた、スーサと同等(あるいはそれ以上)の存在に押し上げるつもりだったのかもしれない。

 エラムの地域的な権力と自信が高まったウンタシュ・ナピリシャの治世には、すばらしい芸術品が生み出された。その一例が、スーサで発見された、王の妻ナピラスをかたどった精細な細工が見事なブロンズ像であり、またチョガ・ザンビールからも数々の美術品が見つかっている。

ウンタシュ・ナピリシャの治世にはすばらしい芸術品が生み出された。写真は紀元前1300年頃に作られた女王ナピラスのブロンズ像。(BRIDGEMAN/ACI)
ウンタシュ・ナピリシャの治世にはすばらしい芸術品が生み出された。写真は紀元前1300年頃に作られた女王ナピラスのブロンズ像。(BRIDGEMAN/ACI)

 しかし、ウンタシュ・ナピリシャの死後、チョガ・ザンビールの建物群は完成を見ることはなかった。未使用のタイルが積み上げられ、王家の埋葬庫も空のまま残された。建物は略奪を免れて巡礼の地となったが、紀元前1000年頃に廃墟となった。

 紀元前1000年頃には、エラムは地域の大国と肩を並べるほどの力を持っていた。それでも、アッシリアのアッシュールバニパル王には及ばず、紀元前7世紀半ば、チョガ・ザンビールは同国の軍隊の略奪を受けた(破壊は免れた)。それから100年後、エラムはペルシャ帝国に吸収された。その財宝は埋もれ、忘れ去られたが、2500年後、植民地主義と石油の時代に再び発見されることになった。

【この記事の写真をもっと見る】ギャラリー:偶然から発見されたイランの遺跡チョガ・ザンビール 写真あと2点

参考記事: メソポタミアへの見方を変えたウルの王墓、その財宝と残酷な儀式 世界の七不思議「バビロンの空中庭園」の謎を追う 19世紀フランスでは違法、男装の女性考古学者デュラフォイの生涯

[ナショナル ジオグラフィック日本版サイト2022年8月27日掲載]情報は掲載時点のものです。

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