マヤ文明の崩壊

 北部の都市の一部では繁栄が続いたが、9〜10世紀には主要な都市の多くが崩壊し始めた。都市間の関係は悪化して、戦争が頻発するようになった。貿易は衰退し、死亡率も上昇した。

 マヤ文明が崩壊した原因については、さまざまな説がある。長期に及ぶ干ばつと、焼畑農法の影響で森林が破壊されたことが原因だとする説は、気候シミュレーションによる裏付けがある。住民が死亡したり、より肥沃な南方の山岳地帯に移り住んだりした結果、かつて栄えた都市の中心部は突然、さびれた放棄地と化した。チチェンイツァのような大都市が崩壊したので、マヤパンなどの都市は勢いを増したが、その他のマヤの人々は完全に都市を離れ、小さな村に住まいを移した。(参考記事:「マヤ文明の衰退は気候変動のせい?」

マヤの貴婦人の陶像。メキシコシティの国立人類学博物館所蔵。(HENRI STIERLIN / BILDARCHIV STEFFENS / BRIDGEMAN IMAGES)
マヤの貴婦人の陶像。メキシコシティの国立人類学博物館所蔵。(HENRI STIERLIN / BILDARCHIV STEFFENS / BRIDGEMAN IMAGES)
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あごひげのあるマヤ人男性をかたどった塗装された陶製の座像。マヤ文明の古典期後期(600~900年頃)に制作された。(J.B.H. HENDERSON MEMORIAL FUND / BRIDGEMAN IMAGES)
あごひげのあるマヤ人男性をかたどった塗装された陶製の座像。マヤ文明の古典期後期(600~900年頃)に制作された。(J.B.H. HENDERSON MEMORIAL FUND / BRIDGEMAN IMAGES)
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 マヤ人はこうして生き延びたが、マヤ文明が衰退したため、人々は1500年代に始まったヨーロッパの植民地化に抗えなかった。1524年頃にスペインがマヤを完全に制圧したときには、マヤの主要都市の大部分はすでに放棄されていた。(参考記事:「マヤ文明の衰退、従来説を覆す研究成果」

 一方、新たに到着したスペインの探検家たちは、マヤ人の土地を没収し、キリスト教への改宗を強制したものの、植民地に点在する遺跡にはほとんど関心を持たなかった。

マヤ文明の再発見

 1840年代になってようやく、マヤ人が放棄した文明の痕跡に興味を抱いた探検家や研究者によってマヤ文明は「再発見」された。弁護士で外交官の米国人ジョン・ロイド・スティーブンスと、画家で建築家の英国人フレデリック・キャザーウッドは、中米で一連の考古学探検を行い、マヤ遺跡を地図と文書に記録した。

 この地方に遺跡があることは知られていたが、ヨーロッパ人の多くは中米の先住民を未開で知性に乏しい人々と考え、こうした歴史的価値のある芸術の作者が彼らであるはずがない、と決めつけていた。スティーブンスとギャザーウッドは、このような見方が誤っていることを証明して、遺跡の価値と制作者を明らかにしたいと望んでいた。

 2人はマヤの栄光をよく理解していた一方で、発見した遺物から利益を得たいとも考えており、マヤの都市全体をそっくり購入してニューヨークの博物館に移送しようとさえした。それでも、2人の尽力によってマヤ文明は世界から注目されるようになり、その後の考古学的発見の基盤が築かれた。

 今日のマヤ考古学は隆盛をきわめ、ジャングルに埋もれていた遺跡や宗教的遺物などの多くの痕跡が、現代の発掘技術を駆使して発見されている。学者たちは、マヤ文明とその壮大な繁栄や謎めいた衰退について、さらに研究を進めている。

 マヤ人の過去を伝えるものは考古学的な遺物がすべてだが、マヤ人は現在も生きている。現代の中米には600万人以上のマヤ人の子孫が生活し、古代マヤ語から派生した30以上の言語が用いられている。また、子孫の人々は、マヤ文明の農業、宗教、土地管理に関する数々の伝統を守り続けている。これは、数世紀にわたって苦難や変化にさらされたマヤ人の文化が持つ適応力の証しと言えるだろう。

[ナショナル ジオグラフィック日本版サイト2022年9月11日掲載]情報は掲載時点のものです。

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