地元の人々や農家の人々は、長年、このストーンサークルは「妖精の輪」で、石を動かすと災いがふりかかると信じ、避けてきた。その後、考古学者の発掘調査により、これは青銅器時代の円形住居の基礎であることが判明した。(PHOTOGRAPH BY RM IRELAND, ALAMY STOCK PHOTOS)
地元の人々や農家の人々は、長年、このストーンサークルは「妖精の輪」で、石を動かすと災いがふりかかると信じ、避けてきた。その後、考古学者の発掘調査により、これは青銅器時代の円形住居の基礎であることが判明した。(PHOTOGRAPH BY RM IRELAND, ALAMY STOCK PHOTOS)
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 何十年もの間、地元の人々や農家の人々は、円形に並べられた石は「妖精の輪」あるいは「妖精の砦」であり、石を動かすと災いがふりかかると信じ、この地を避けてきた。その後、考古学者によって発掘調査が行われ、青銅器時代の円形住居の跡であり、ケイジ・フィールズを建設する際に出た石で建てられたものであることが判明した。(参考記事:「ハロウィンの起源はここ、アイルランド『悪魔の洞窟』」

年間250日の雨が形成する泥炭地

 ケイジ・フィールズの一部は発掘されているが、泥炭の下には数十万平方メートルにわたって歴史的遺物が眠っている可能性がある。1981年に学生としてケイジ・フィールズの発掘チームに参加し、現在はこの施設を管理している考古学者のグレッタ・バーン氏は、「まだ膨大な量の資料が地中にあることが分かっています」と言う。「けれども、その多くは手つかずのまま残されるでしょう。すべてを調査しようとしたら、あと5000年はかかるでしょうから」

 見学者は、3億7000万円を投じて改装された体験型観光施設で、この土地に住み農業を営んでいた人々についての謎解きを試みることができる。ここは、アイルランドの西海岸をめぐる全長2600キロメートルの観光ルート「ワイルド・アトランティック・ウェイ」の立ち寄り地のひとつだが、まだあまり知られていない。(参考記事:「おすすめ! アイルランド、自然満喫のドライブ旅」

 施設には、最新のオーディオビジュアル展示やアーティストによる当時の建物の復元、海食崖の風景を一望できる展望台があり、石器時代のアイルランドをより深く理解できる。最初の農民がどのようにしてアイルランドに到着したかを示す丸太船のレプリカ、森林を切り開いて住居や家畜小屋を建てる様子を描いたイラスト、農民が死者を追悼するために石のモニュメントを建てた様子を解説するディスプレーもある。

3億7000万円をかけて改装されたケイジ・フィールズの新しい観光施設は、インタラクティブな展示と臨場感あふれる解説で、見学者を石器時代のアイルランドにいざなう。 (PHOTOGRAPH BY HEMIS, ALAMY STOCK PHOTOS)
3億7000万円をかけて改装されたケイジ・フィールズの新しい観光施設は、インタラクティブな展示と臨場感あふれる解説で、見学者を石器時代のアイルランドにいざなう。 (PHOTOGRAPH BY HEMIS, ALAMY STOCK PHOTOS)
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 イタリアのトリノから来た観光客のロベルタ・リチエロ氏は、この施設を訪れることは「時空を超える経験です」と興奮気味だ。「世界の終わりのような崖に立ち、世界の始まりに向かって、歴史に足を踏み入れていくのですから」(参考記事:「世界を驚かせた考古学の発見100

 バーン氏は、この遺跡の広大さを観光客に理解してもらうために泥炭地をめぐるガイドツアーを行い、この地域の地理や生態、雨の重要性について説明している。「遺跡を覆い隠す泥炭地を形成するには、1年に225日間、1270ミリメートルの降水量に相当する雨が降る必要があります。ここでは1年のうち約250日は雨が降っています」

 バーン氏は、考古学者が石垣を発掘するために泥炭を切り出した場所を案内してくれた。ある区画では、人々が建物を建てはじめたときの地面が示されており、その後、集落の上に泥炭が4メートルも堆積した様子を見ることができる。

 バーン氏は、研究しなければならない部分は多いが、ケイジ・フィールズの多くの場所が手つかずのまま残っているのは「良いことだ」と言う。「現在の技術では、発掘によって地面から土を除去すると、その土は基本的にだめになってしまいます。けれども、将来的には、考えもつかないような新しい技術が開発されるかもしれません。それが考古学の魅力で、常に新しい発見があるのです」

[ナショナル ジオグラフィック日本版サイト2022年9月16日掲載]情報は掲載時点のものです。

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