米国カリフォルニア州のプロビデンス・ウィルミントン健康活動センターで、正看護師のダリル・ハナさんがコンセプシオン・ウィトロンさんに米ファイザー製の新型コロナウイルスワクチンを打っている。すでに発症したことがある人でも、ファイザー製などのmRNAワクチンを1回接種するだけで、この致命的な病気に対する免疫を高めることができる。(PHOTOGRAPH BY MARIO TAMA, GETTY)
米国カリフォルニア州のプロビデンス・ウィルミントン健康活動センターで、正看護師のダリル・ハナさんがコンセプシオン・ウィトロンさんに米ファイザー製の新型コロナウイルスワクチンを打っている。すでに発症したことがある人でも、ファイザー製などのmRNAワクチンを1回接種するだけで、この致命的な病気に対する免疫を高めることができる。(PHOTOGRAPH BY MARIO TAMA, GETTY)
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 すでに新型コロナウイルス感染症にかかったことがある人も、ワクチン接種を受ける必要があるのだろうか? 新型コロナウイルスワクチンの接種が鈍化しているなか、感染者がまた増え始めた米国で、くすぶり続けてきたこの疑問が再浮上している。

 自然免疫は水痘(水ぼうそう)、麻疹(はしか)などの病気に対して強い力を発揮する。麻疹に感染して回復すれば、ワクチン接種に匹敵するか、場合によってはそれ以上の免疫を獲得できると、米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院の小児科医ルース・カロン教授は話す。

 だが当然ながら、患者はまず生き延びなければならない。

 また、新型コロナにかかって獲得した免疫が、ワクチン接種によって得た免疫と同じくらい強力かどうかはまだはっきりしていない。今のところ、現行のワクチンはデルタ株のような感染力の強い変異株に対しても、重症化や死亡を防ぐ効果が高いことが明らかになっている。

 さらに、新型コロナにかかったことがある人は、米モデルナ製や米ファイザー製のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンを1度接種するだけでも免疫が強化されるという研究結果もある。

「まだワクチン接種を受けていない人は全員、できるだけ早く受けることをおすすめします」と米フレッド・ハッチンソンがん研究センターの研究者アリソン・グリーニー氏は呼び掛け、ワクチンは「とても危険なウイルスから私たちを守ってくれます」と言い添えた。

ワクチンの抗体は変異にも強い

 大学院生のグリーニー氏が率いる研究チームは、ワクチンが自然感染よりも優れた免疫をもたらすと示唆する論文を6月30日付けで学術誌「Science Translational Medicine」に発表した。研究チームは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復した人々と、モデルナの第1相臨床試験で同社のmRNAワクチンを2回接種した人々の抗体を調べた。

 その結果、どちらのグループも新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の「受容体結合部位(RBD)」を標的とする抗体を持っていた。RBDはウイルスのスパイクたんぱく質に存在し、ヒトの細胞表面にある受容体たんぱく質(ACE2)と結合するところだ。両者が結合するとウイルスはヒトの細胞に侵入し、感染を引き起こす。もし抗体がRBDに付着すれば、ウイルスを無力化できる。

 COVID-19から回復した人の抗体は主に、RBDのなかでもE484という部位の周辺に結合していることが判明した。一方、ワクチンを接種した人の抗体はRBDのより広い範囲に付着していた。つまり、E484に変異をもつベータ株(南アフリカで初確認)やガンマ株(ブラジルで初確認)、近くのL452に変異をもつデルタ株(インドで初確認)などで、変異のない領域もターゲットにできるということだ。

続きを読む 2/2 目標は感染防止ではなく重症化の阻止

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