
専門家が「ビッグナイン」と呼ぶ食べ物がある。牛乳、卵、ナッツ、魚、甲殻類、貝類、小麦、大豆、ゴマの9種類だ。これらは食物アレルギーの原因として最も一般的な食品で、年齢に関係なく発症する可能性がある。発症すると、生活習慣の改善や注意が必要になるが、最悪の場合、アナフィラキシーという生命を脅かすアレルギー反応を引き起こす可能性がある。
ここ数十年で食物アレルギーをもつ人の割合は爆発的に増加していることを示唆するデータがある。食物アレルギーがどれくらい広がっているかを調べるにはいくつか困難な点があるが、米疾病対策センター(CDC)の報告によると、米国では食物アレルギーをもつ子どもの割合が1997〜2011年の間に1.5倍になった。2017年に医学誌「The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice」に発表された論文によると、米国では5〜17歳の子供たちのアナフィラキシーによる救急科受診率が2005〜2014年の間に約3倍に増加した。
米国では、1つ以上の食物アレルギーをもつ人が3200万人以上おり、そのうち約560万人は18歳未満の子どもであることが、2019年1月に医学誌「JAMA Network Open」に掲載された論文および2018年12月に医学誌「Pediatrics」に掲載された論文で示された。また、これらのデータから、遺伝と環境が食物アレルギーの急増にどのように関わっているのかを知るための手がかりが得られた。
食物アレルギーに関する最新の研究成果と、食物アレルギー対策のための最先端技術について、第一人者の専門家に聞いた。
食物アレルギーとは?
特定の食物にアレルギーをもつ人々の数を特定することは困難だ。理由の一つとして、アレルギー反応に似た症状を示す食物過敏症が数多く存在することが挙げられる。例えば、乳糖不耐症は、アレルギー反応に似た腹痛を引き起こすことがあるが、厳密には消化器系の問題であり、牛乳アレルギーではない。
食物に対して悪い反応が出たとき、それが本当にアレルギーかどうかを確認する最善の方法は、医師の診断を受けることだと、米ノースウェスタン大学医学部の食物アレルギー・ぜんそく研究センター(CFAAR)所長のルーチ・S・グプタ氏は言う。アレルギーであることが分かれば、治療計画を立てることができると氏は説明する。
食物アレルギーは免疫反応であるという点で他の過敏症とは異なる。アレルギー反応では、ビーナッツタンパク質などの本来は無害な外来のタンパク質を、体が危険なものとして誤って認識する(アレルギー反応を引き起こすタンパク質を「アレルゲン」と呼ぶ)。そして、侵入者を撃退するために、体は「免疫グロブリンE」(IgE)と呼ばれる抗体を産生する。
特定の免疫細胞(好酸球、マスト細胞、好塩基球)にIgEが結合すると、活性化して「ヒスタミン」と呼ばれる化学伝達物質を放出する。これにより、腸・皮膚・肺・心臓の4つの主要な臓器系のいずれかにアレルギー反応が生じる可能性がある。症状としては、かゆみや発疹、肺の筋肉の収縮、嘔吐や下痢などだ。
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