時差ボケは、旅行者が出発地から3時間以上離れたタイムゾーン(時間帯)に適応できないときに起きる。この写真は、ティルトシフトレンズを用いて撮影した米ニュージャージー州のテターボロ空港の飛行機。(PHOTOGRAPH BY VINCENT LAFORET, THE NEW YORK TIMES/REDUX PICTURES)
時差ボケは、旅行者が出発地から3時間以上離れたタイムゾーン(時間帯)に適応できないときに起きる。この写真は、ティルトシフトレンズを用いて撮影した米ニュージャージー州のテターボロ空港の飛行機。(PHOTOGRAPH BY VINCENT LAFORET, THE NEW YORK TIMES/REDUX PICTURES)
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 飛行機で何時間も時差がある場所に移動すると、「概日リズム睡眠障害」、いわゆる「時差ボケ」と呼ばれる状態になることがある。これは一時的な睡眠障害で、体内時計が目的地の時間と同期せず、日光や夜の暗さ、食事時間といった外界の刺激を受けてもずれを修正できない状態が続くことだ。

 米国から英国に行った初日の昼食時にうたた寝をしてしまったり、日本での休暇の初め2〜3日間はよく寝つけなかったりするのも、時差ボケのせいだ。「私たちの体には自然なリズムが備わっており、かなり一定に保たれています」と、米ジョージ・ワシントン大学睡眠障害センターのビベック・ジェイン所長は言う。

 しかし、時差ボケで旅行を台無しにせずに済む方法はある。「時差ボケを想定して計画を立てれば、旅行の数日前に目的地のタイムゾーン(時間帯)にほぼ適応することができます」と、神経学者で著書に『The Sleep Solution: Why Your Sleep Is Broken and How to Fix It(睡眠解決策:なぜ睡眠が乱れるのか、どうすれば治せるのか)』があるW・クリス・ウィンター氏は言う。

 新たな時間帯に徐々に慣れるために利用できるものには、光、計画的な昼寝を含めた睡眠、おやつ、カフェインなどがある。また、ハイテク機器やより安全性の高い医薬品といった最近の科学的イノベーションも、時差ボケ対策に役立つ。(参考記事:「時差ボケは忘れた頃にぶり返す」

 以下では、専門家が提案する、新たな時間帯にすぐ慣れるための方法を紹介していく。(参考記事:「知ってるようで知らない時差ボケ対策」

まずは機内で光を完全に遮断

 深夜便を利用したときに有効な時差ボケ対策のひとつに、飛行機内で睡眠をとるために、光を完全に遮断するというものがある。目的地の時間帯が出発地より数時間早い場合は、まずサングラスを掛けて眠る準備をしておき、その後アイマスクをつけて眠ろう。脳が暗闇を感知すると、体内時計を調整するホルモンであるメラトニンが分泌され、眠りを誘うのだ。(参考記事:「節電と安眠の一石二鳥、照明を暗くしてみよう」

時差ボケも気から? 快適さは意外と大事

 2021年4月にドイツの研究者が査読前論文を投稿するサーバー「bioRxiv」に発表した研究では、時差ボケを心配していると時差ボケが悪化することがわかった。そのため、もし特定のルーティーンやアイテムを使えば眠りやすいなら、実際に効くかもしれない。

 機内をより快適で静かに過ごせるように、できる限りの方法を用いよう。「基本的に、眠りに落ちるほど快適になる方法なら何でも、非常に強いプラセボ(偽薬)効果が期待できます」と、米スタンフォード大学睡眠・概日リズム科学センターの共同センター長であるジェイミー・M・ザイツァー氏は言う。(参考記事:「偽の薬だと知りながら服用しても効果があるのはなぜか」

 従来のC型枕や、最新の「Trtl」や「オーストリッチピロー」といった首や頭を覆うタイプの枕は、パッド入りのネックスカーフに似ており、360度全方位で頭を支えてくれる。また、長時間のフライトで足や背中にかかる負担を軽減するために作られたフットハンモック(前の座席の下に引っ掛けて使用する)も試してみる価値がある。

 あとは、ノイズキャンセリングヘッドホンや耳栓を使い、眠れる環境を作ろう。シリコーン製の耳栓は、耳の穴を完全にふさぐようにぴったりと装着できるため、従来の発泡ウレタン製より快適だ。

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