韓国人DJのNight Tempoがヒットの立役者

 Future Funkを生んだ立役者として知られるのが、韓国人DJ兼プロデューサーのNight Tempo。特に竹内まりや「Plastic Love」のリミックス音源が注目されると、後を追うように「Plastic Love」の原曲が18年ごろには世界的なブームに。非公式ではあるが、音源が聴ける動画がYouTube上で世界中に拡散した。柴氏は、「英語圏やアジア圏で突如、『Plastic Love』の動画が、音楽を聴いている人のYouTubeの関連動画に頻出するようになった。これが、シティポップが広く世界の音楽ファンに注目され始めたきっかけの一つ」と言う。

「Plastic Love」のヒットに呼応するように、竹内まりや自身も過去のライブのベストシーンを収めた映像作品「souvenir the movie ~MARIYA TAKEUCHI Theater Live~」を18年11月に劇場公開。19年には年末のNHK「紅白歌合戦」に出場するなど、精力的に活動を続けている。

 ブームの発端たる「Plastic Love」のヒットが韓国人DJによるリミックスだったとすれば、それを決定付ける「真夜中のドア/Stay With Me」のヒットはインドネシア人シンガーソングライターのカバーだったといえる。16年から1980年代のシティポップや最新アニソンの日本語カバーをYouTubeで公開してきたRainychが2020年10月末、21年4月中旬時点で登録者数150万人を超えるチャンネル上で「真夜中のドア/Stay With Me」のカバー動画を公開。原曲が世界的にヒットしたのは、その数カ月後の出来事だった。

アジアのアーティストがヒットを牽引
アジアのアーティストがヒットを牽引
韓国発  Night Tempo
韓国人DJ兼プロデューサー。音楽配信サービス「SoundCloud」などにシティポップをサンプリングした音源などを公開し、Future Funk誕生の立役者に。19年からシティポップなどの曲をリミックスする「昭和グルーヴ」シリーズを始動。
<span class="fontBold">インドネシア発  Rainych</span><br> インドネシア出身のシンガー。日本語を話せないにもかかわらず、J-POPカバーを中心に動画を上げはじめ、16年からYouTubeでの活動を開始。タワーレコードのコンピCDにも参加。
インドネシア発  Rainych
インドネシア出身のシンガー。日本語を話せないにもかかわらず、J-POPカバーを中心に動画を上げはじめ、16年からYouTubeでの活動を開始。タワーレコードのコンピCDにも参加。

日本でもシティポップがロングセラーに

 では、なぜ海外でこれほどまでにシティポップが受け入れられているのだろうか。芦澤氏は、「シティポップはAORと呼ばれるジャンルなど、当時日本を含め世界的にヒットしていた洋楽がベースにある。そこに日本独特の要素が加わり、海外の人にとっては親しみやすく、どこかエキゾチックな雰囲気を感じさせる点が魅力ではないか」と分析する。

 海外ではバラードより、聴いていると自然に体が動くようなグルーヴ感のある曲が支持されるという。「例えば海外の人気曲だと、竹内まりやさんなら『純愛ラプソディ』や『シングル・アゲイン』より『Plastic Love』、杏里さんなら『オリビアを聴きながら』より『Remember Summer Days』というように、日本での人気や知名度と必ずしも一致しない」(芦澤氏)。Spotifyでは「70's City Pop」など、年代別にシティポップの曲をまとめたプレイリストを公開している。

 日本では、海外の少し前からシティポップを巡る動きが活発化。タワーレコード商品本部の担当者は、「2000年代初頭から、『Light Mellow和モノ669』(監修:金澤寿和)をはじめ、シティポップをテーマにした新ガイド本などの出版が目に付くように。山下達郎さんの『MELODIES 30th Anniversary Edition』、大瀧詠一さんの『A LONG VACATION 20th Anniversary Edition』など名盤の最新リマスターが出ると、他の新作と共にチャートインし、ロングセラー化する現象も珍しくなくなった」と言う。

 10年代に入ると、シティポップを知らない若者の間にも裾野が広がる。ceroやSuchmosらネオ・シティポップとも呼ばれることもある新ジャンルのアーティストが登場してきたのだ。シティポップに通ずるしゃれた空気感、グルーヴ感を感じさせるヒット曲が続けて誕生。アーティストが影響を受けた音楽にシティポップを挙げることなどが、若者がシティポップを聴くようになる入り口になった。

 レコード会社や音楽ショップもシティポップブームに注目している。ポニーキャニオンは松原みきの作品も含む、入手困難な商品や廃盤に一定のオーダーが入ると商品化する「パッケージ・オーダー・プロジェクト(POP)」を始動。タワーレコードは21年5月5日まで「CITY POP Voyage」キャンペーンを開催。人気のオリジナル音源やカバー曲を収録したコンピレーションアルバム『CITY POP Voyage - STANDARD BEST』も発売した。

音楽ショップも大々的に展開
音楽ショップも大々的に展開
タワレコがコンピCD発売 キャンペーン企画も実施。タワーレコードでは近年、シティポップコーナーや、山下達郎など関連アーティストのコーナーを強化。独自のコンピレーションアルバム企画や名盤の復刻リリースも企画
<span class="fontBold">『CITY POP Voyage - STANDARD BEST』</span>(21年3月21日リリース)<br> 吉田美奈子「TOWN」<br> 米光美保「恋は流星~SHOOTING STAR OF LOVE~」<br> 大貫妙子「都会」<br> 岡村靖幸+坂本龍一「都会」<br> 早見 優「恋のブギウギトレイン」など
『CITY POP Voyage - STANDARD BEST』(21年3月21日リリース)
吉田美奈子「TOWN」
米光美保「恋は流星~SHOOTING STAR OF LOVE~」
大貫妙子「都会」
岡村靖幸+坂本龍一「都会」
早見 優「恋のブギウギトレイン」など

Spotifyプレイリストに見る 世界で聴かれるシティポップの名曲

<span class="fontBold">City Pop '70</span><br> 松原みき「真夜中のドア/Stay With Me」<br> 荒井由実「中央フリーウェイ」<br> 大貫妙子「都会」<br> サディスティックス「The Tokyo Taste」<br> 南 佳孝 duet with 大貫妙子「日付変更線」<br> ティン・パン・アレー「ソバカスのある少女」<br> 小坂 忠「流星都市」<br> Char「SHININ' YOU,SHININ'DAY」<br> 鈴木 茂「砂の女」
City Pop '70
松原みき「真夜中のドア/Stay With Me」
荒井由実「中央フリーウェイ」
大貫妙子「都会」
サディスティックス「The Tokyo Taste」
南 佳孝 duet with 大貫妙子「日付変更線」
ティン・パン・アレー「ソバカスのある少女」
小坂 忠「流星都市」
Char「SHININ' YOU,SHININ'DAY」
鈴木 茂「砂の女」
<span class="fontBold">City Pop '80</span><br> 竹内まりや「プラスティック・ラヴ」<br> 杏里「Remember Summer Days」<br> 大橋純子「テレフォン・ナンバー」<br> 吉田美奈子「LIGHT'N UP」<br> EPO「DOWN TOWN」<br> 菊池桃子「Blind Curve」<br> 1986オメガトライブ「Older Girl」<br> サザンオールスターズ「EMANON」<br> 稲垣潤一「サザンクロス」 など
City Pop '80
竹内まりや「プラスティック・ラヴ」
杏里「Remember Summer Days」
大橋純子「テレフォン・ナンバー」
吉田美奈子「LIGHT'N UP」
EPO「DOWN TOWN」
菊池桃子「Blind Curve」
1986オメガトライブ「Older Girl」
サザンオールスターズ「EMANON」
稲垣潤一「サザンクロス」 など
注)作品の発売時期は、原則オリジナル作品のタイミングを示す。Spotifyのプレイリスト収録曲は21年4月中旬時点で編集部が作成
月刊誌「日経トレンディ」

 消費トレンド・ヒットを研究する月刊誌「日経トレンディ」。2021年6月号では「エンタメブーム大研究」「2021年上半期ヒット大賞 下半期ブレイク予測」を特集しています。

 新型コロナウイルスの影響で旅行などが制限される中、救いとなるのが音楽やゲームなどのエンターテインメント。2021年上半期に話題になったコンテンツは、一見なぜはやったのか分からない謎めいたヒットが多く生まれました。そこで、人の心を動かすブームの源はどこにあるのか、徹底解析します。

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