※日経トレンディ2021年6月号の記事を再構成
2020年末、1979年に発売された日本の名曲が、世界の音楽シーンを席巻した。松原みき「真夜中のドア/Stay With Me」が、Spotifyのグローバルバイラルチャートで18日連続1位になったのだ。バイラルチャートとは、SpotifyからSNSなどにシェアされ再生された回数などを基に集計された、「今話題の曲」を反映したもの。つまり、2週間以上にわたって、世界で最も旬な曲であり続けたといえる。
実は2010年代末から、シティポップは「新しい音楽」としてリリース時を知らない海外の音楽ファンや日本の若者に聴かれる“第2の最盛期”とも呼ぶべき時代を迎えている。「真夜中のドア/Stay With Me」の突然のヒットは、その象徴的な出来事でもある。



そもそもシティポップとは何か。明確な定義は無いが、音楽ジャーナリストの柴那典氏は、「概念的だが、世界で聴かれているのは1970、80年代の日本で、都会的でおしゃれなイメージの曲として聴かれていたポップソング」と解説する。代表的なアーティストに挙げられるのは山下達郎や竹内まりや、大瀧詠一、大貫妙子など。ここでは、この定義に沿う曲をシティポップと呼ぶ。
まず海外のコアな音楽ファンの間で、シティポップの認知が広がっていったのは2010年代前半。1980年代頃の日本を含む各国の曲や音源の一部を取り入れ(サンプリングして)、新たな曲を作り上げる「Vaporwave」というジャンルが話題に。派生する形で日本の曲を題材にした「Future Funk」という新たなジャンルも生まれた。
国内外の音楽トレンド動向に詳しいSpotify Japan コンテンツ統括責任者の芦澤紀子氏は、「VaporwaveやFuture Funkが世界的なトレンドになり、そこでサンプリングする曲の“ネタ探し”を通してシティポップの曲が世界で発掘されていき、ここ数年のストリーミングサービスの普及でメインストリームに広がっていった」と言う。
2010年代初頭~▼ | 音楽ジャンル「Vaporwave」「Future Funk」が世界の音楽ファンの間で注目を集める |
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2010年代半ば~▼ | シティポップの影響を感じさせる若手アーティスト・バンドが続けて登場し、「ネオ・シティポップ」としても注目を集める |
2018年ごろ▼ | 竹内まりや「Plastic Love」が世界的なブームに |
2019年▼ | Night Tempoが「昭和グルーヴ」シリーズを始動 |
2020年▼ | 松原みき「真夜中のドア/Stay With Me」がSpotifyのグローバルバイラルチャートで18日連続1位に |
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