ハルウララは勝たなくていい!? 競馬ファンも納得の忠実さ

 競馬ファンを捉え続けたのには、実際の競馬への忠実さがある。ゲームではプレーヤーがトレーナーとなり、ウマ娘を育成して「宝塚記念で3着」「天皇賞(秋)で1着」など設定されたレース順位のクリアを目指していくが、例えばハルウララ(ウマ娘)の目標の一つはレースで勝つことではなく、レースに出走してファンを増やすこと。モデルとなった競走馬の生涯成績は113戦0勝。史上最弱と呼ばれたものの、「ハルウララブーム」があるほど全国的な人気・知名度を誇ったため、ゲーム内でもその要素が組み込まれた。

ゲーム

競馬ファンにとっては…「競走馬育成さながらのゲーム性」
競馬ファンにとっては…「競走馬育成さながらのゲーム性」
トレーニング(左)とレース(右)の場面。身体能力だけでなく、賢さのアップも重要なポイントだ (c)Cygames, Inc.

 Cygamesの「ウマ娘」開発ディレクターは、「我々だけで物語をつくるのではない」と話す。当時の映像や騎手・調教師など競馬関係者の記事、ファンの声を掲載した書籍の特集などできる限り資料を集め、関係者への取材も実施。さらにウマ娘たちが走る競馬場も取材し、坂や周辺の建物などを徹底的に再現した。

 一方、「美少女を育成するシミュレーションゲームとして遊べることも妥協せずに開発した」とも言い、美少女ゲーム、育成ゲームとしての面白さは、競馬を知らないファンをも魅了した。難しい操作を必要としないゲーム性やクオリティーの高い3Dグラフィックスなど、競馬の要素を抜きにしてもゲームの完成度が高い。一般的にはコスト削減のためキャラクターの3Dグラフィックスを一定汎用化させる場合も多いが、「ウマ娘」ではキャラクター一人ひとりの個性や魅力を最大化するため、できる限り個別に表情や仕草の演出をつくり込んでいる。

 例えば、明るく元気いっぱいな性格のスペシャルウィーク(ウマ娘)は、笑顔が多く動きも大きい。反対に作中での様子を「サイボーグなのでは」と評されるミホノブルボン(ウマ娘)は、ほとんど表情を変えず淡々とした動きだ。また、ゲームの展開によっても、違った表情や仕草が見られる。温和な性格のマルゼンスキー(ウマ娘)は普段おっとりとした表情や仕草だが、レース中になると眉間にしわを寄せた鬼気迫る表情になる。

 ゲームが話題になったことで、ゲームリリース時に放送中だったテレビアニメ第2期の人気も急上昇。第1期から、レース場は場内の建物や場外の背景など本物を忠実に再現したり、レース実況にも実際の競馬中継で活躍する解説者を起用したりしていたが、第2期では、実際の競馬でもライバル関係にあったトウカイテイオーとメジロマックイーンをメインキャラクターにした。第5話で描かれる天皇賞(春)の両者の戦いでは、1992年に実際にあったレースを再現。実際の競走馬の活躍や関係性まで細かく反映したことで、アニメからも制作陣の本気度が競馬ファンに伝わった。

アニメファン、競馬ファンを両方うならせるテレビアニメ

アニメ

史実に沿ったライバル関係は誰が見ても熱い
史実に沿ったライバル関係は誰が見ても熱い
競馬ファンがより楽しめる小ネタ、元ネタが満載 (c)2021 アニメ「ウマ娘 プリティーダービー Season 2」製作委員会
競馬ファンがより楽しめる小ネタ、元ネタが満載 (c)2021 アニメ「ウマ娘 プリティーダービー Season 2」製作委員会
熱いスポ根アニメとしても話題に (c)2021 アニメ「ウマ娘 プリティーダービー Season 2」製作委員会
熱いスポ根アニメとしても話題に (c)2021 アニメ「ウマ娘 プリティーダービー Season 2」製作委員会
まだまだ広がるメディアミックスの輪

CD

歌唱曲や楽曲を多数収録
歌唱曲や楽曲を多数収録
(c)Cygames, Inc.

ライブ

声優陣によるリアルイベント
声優陣によるリアルイベント
第3弾も開催決定 (c)Cygames, Inc.

YouTube

VTuber企画にも早くからトライ
VTuber企画にも早くからトライ
なんでもありのキャラクター・ゴールドシップを起用。宣伝担当の枠を飛び出し、様々な動画企画を展開 (c)Cygames, Inc.
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月刊誌「日経トレンディ」

 消費トレンド・ヒットを研究する月刊誌「日経トレンディ」。2021年6月号では「エンタメブーム大研究」「2021年上半期ヒット大賞 下半期ブレイク予測」を特集しています。

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この記事はシリーズ「日経トレンディ発 なぜ流行る? エンタメブーム大研究」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。