ビールを飲まない層を取り込めた理由は
糖質ゼロでは、ビールを飲まなかった層をビールの世界へ流れ込ませる現象を生んだ。キリンビールによると、購入者の約6割はいつもは発泡酒や新ジャンルを購入している人だという。試しに飲んだ人が味に納得し、リピート買いしたからこそ、年間通して売れ続けているといえる。
味に自信があったという表れであろう。新ブランドを立てるのではなく、キリンビールの看板ブランドである一番搾りを冠した。その勝負に出た戦略は当たった格好だ。一番搾りブランド全体の底上げにつなげたのだ。オリジナルの一番搾り缶も、糖質ゼロを発売した時期の21年1~8月に前年比10%増と伸長している。
21年4月にはサントリービールも糖質ゼロをうたった新ビールブランドを立ち上げ、ビール市場に糖質ゼロというジャンルが生まれた。
市場規模が右肩下がりだったところに、酒税法改正でビールの税率が下がるという追い風が吹き、何かと話題が尽きなかったビール業界。独自技術による商品づくりという王道で勝負したキリンビールが放ったヒットは、競合メーカーも大いに刺激したはず。後に21年は、ビール市場の大転換期だったと振り返ることになるのかもしれない。
[日経クロストレンド 2021年11月12日掲載]情報は掲載時点のものです。
日経トレンディ2021年12月号では、看板企画の「ヒット予測100」「ヒット商品ベスト30」を発表しています。2022年にヒットが見込める商品・サービスと、21年にヒットした商品・サービスをランキング形式で発表する企画で、30年以上の歴史があります。ランキング以外にも、「地方発ヒット大賞」や約290社のヒット商品がずらりと並んだ「メーカー別ヒット総覧」を掲載。1年を総括し、激動の時代のヒット現象を業界横断で知る、ビジネスパーソン必読の1冊です。
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