──橘さんは2002年に経済小説『マネーロンダリング』(幻冬舎)で小説家としてデビューし、同年に刊行された資産運用の指南書『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)も大ベストセラーとなりました。初期の著作には資産運用や人生設計に関する本が多く、そこから次第に日本人論やリベラリズムの問題など、年々取り扱うテーマが社会批評的な方向へと広がっています。

 『幸福の「資本」論』(ダイヤモンド社)に書いたのですが、人生の土台には「金融資本(お金)」「人的資本(働いて労働市場からお金を手に入れるための資本)」「社会資本(人間関係)」の3つの資本があると考えています。この3つの資本を持っていれば、人生はある程度うまくやっていくことができる。

 3つの資本の中で、最もシンプルなのは金融資本です。攻略は難しいけれど、理屈は単純で理解しやすい。その次が人的資本(働き方)で、最も難しいのが社会資本です。著作で扱う内容も、その3つの資本の区分に沿って、だんだん難易度が高いところへと進んできたわけです。

橘玲『幸福の「資本」論』(ダイヤモンド社)
橘玲『幸福の「資本」論』(ダイヤモンド社)
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──『無理ゲー社会』においてもそうですが、橘さんは多くの著作で「人が直視したくないような不愉快な事実の中にこそ、語るべき価値がある」という切り口を貫いています。こうしたものの見方は、過去の経験の中で得たものですか?

 反抗的というわけではなかったんですが、昔から同調性が低いというか、学校などで「みんな一緒に」というのは気詰まりで、友達がいなくてもさほど気にならないというのはありました。大学時代も、大きな会社に勤めるのは自分には無理だと思っていて、就活は全くしませんでした。その頃から、他人と同じことをしていては目立てないのに、なぜみんな同じことをしようとするのか不思議で、普通とは異なる視点を持たなければ、と考えていたので、今もその延長線上にいるのかもしれません。

 ただ、それは「違う自分になりたい」ということではありません。大学時代、周囲に「自分探し」の旅をする人がたくさんいましたが、その発想は全くなかった。当時も今も変わらず、「自分の持っているものでやっていくしかない」という考え方ですね。