公共・商業施設のトイレをサブスクリプション(定額課金)方式で提供する一風変わった中堅企業がある。木村技研(東京・世田谷)。かつては一介の水道工事会社にすぎなかったが、独自の節水技術で名を上げた。今や名だたる公共交通機関や商業施設がこぞってサービスを導入する。TOTOなど大手メーカーとは戦う土俵を変えることで確固たる地歩を築いた。

 木村技研の本社兼研究開発の根城は、世田谷区の閑静な住宅街のど真ん中にひっそりとあった。

研究開発の一室には便器がずらりと並ぶ
研究開発の一室には便器がずらりと並ぶ

 玄関横の扉を開けて一歩足を踏み入れると、研究開発用便器がずらりと並び、水の流れがみえる透明なプラスチックの配管があちこちに走る光景が目に飛び込んでくる。デモ用のトイレも並び、顧客に向けたショールームにもなっている。

 「トイレは施工して『はい終わり』ではなく、顧客満足度を高める息の長いサービス業なんです」。木村技研の木村朝映社長の持論だ。トイレがサービス業? いったいどういう意味なのか。

 それを知る前にまずは木村技研を世に知らしめた節水装置の話から始めよう。

独自装置で水道代半減

 木村技研によると、男性は1人1日あたり平均69リットル、女性は平均192リットルもの水を使っているという。最適な水量であればこれを半分程度に減らせるが、実際にはムダ遣いが多く、水道代を押し上げている。

 このムダをなくす技術が、木村技研が開発した水量の最適制御装置だ。まず利用者が便座に座るとセンサーが滞在時間の計測を始める。滞在時間によって大か小かを判別し、必要な分だけ水を流す。2分半未満だと小で6リットル、2分半以上だと大で12リットルが流れる。

 トイレの配管内のバルブには独自開発した磁石付きの水量メーターが内蔵されている。磁石が1回転すると0.06リットルの水が流れ、回転数を制御することで最適な水量に抑える仕組みだ。

「アクアエース」のバルブを手にする木村社長。水の使用量を半分程度まで減らす効果が期待できる
「アクアエース」のバルブを手にする木村社長。水の使用量を半分程度まで減らす効果が期待できる

 実際、JR渋谷駅では木村技研の節水技術を導入し、ほぼ半減させることに成功したという。この「アクアエース」と名付けた節水装置の機構について木村技研は特許を押さえており、他社にはなかなかまねできない。

 仮に幼児を除く東京都の人口1000万人が使う便器や装置をアクアエースに切り替えた場合、年間の節水効果は2億9000万立方メートル。これは静岡県の年間水道使用量に匹敵する。水道料金にして1891億円が浮く計算だ。

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