アマゾンや楽天などネット通販市場を支える段ボール。その段ボールを作る機械を手掛ける国内首位メーカーはどこかご存じだろうか。三菱重工業だ。板紙に折り目や切れ目をつけて箱に組み立てた時、面と面がぴたりと合う寸法精度の高さは文字通り“折り紙つき”。巣ごもり需要の追い風もあって販売好調な段ボール製造機を手掛ける同社三原製作所(広島県三原市)を訪ねた。

 段ボール製造機は主に2種類ある。波打った中芯を「ライナー」と呼ばれる段ボールの紙でサンドイッチ状に貼り合わせて1枚のシート(板紙)にする機械が1つ。もう1つは板紙に折れ目や切れ目を入れたり、インク印刷したりする「製函機」だ。今回の主役は後者。段ボールを立体的に組み立てる前の平面状の半製品を製造する。

 三菱重工グループで製函機を開発・製造するのは、子会社の三菱重工機械システム(MHIMS)。本社は神戸市だが、グローバルで唯一生産しているのが三原製作所になる。

1分間に330枚の段ボール製品

 1943年に発足した三原製作所は一部改築されたものの、建屋はかなり年季が入っている。それがまた味わい深いわけだが、祖業が蒸気機関車とあって製函機以外にも新交通システムのゆりかもめの車両や低床式の路面電車、新幹線用のブレーキなどを手掛けている。

製函機は印刷部や給紙部などユニットごとに製造され、最後に組み付けられる
製函機は印刷部や給紙部などユニットごとに製造され、最後に組み付けられる
製函機は板紙の給紙から積み上げ収納まで全長約20メートルにおよぶ
製函機は板紙の給紙から積み上げ収納まで全長約20メートルにおよぶ

 お目当ての製函機工場に入ると、米国の客先に出荷する直前の機械が待機していた。機械はかなり横長で全長約20m。板紙の給紙から始まり、印刷、ケイ線入れ・溝切り、のり付け、折り畳み、加工品の収納というのが工程の流れになる。

 「蝶(ちょう)の舞を目にすることができますよ」。MHIMS印刷紙工機械事業本部の仁内邦男スペシャリスト・エキスパートが、ニヤッと笑う。機械が起動し板紙が吸い込まれていくと、中間からやや後工程だろうか、板紙が真ん中の面から両サイドにパタパタと折り畳まれていく。その様子は、確かに蝶が羽ばたいているよう。

 目にもとまらぬ早業で、聞けば1分間に330枚の段ボールを生産できるという。後ほど説明するが、この2倍量産できる優れものもある。

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