日本製鉄が進めるグローバル化が新しいステージに入った。タイやインドなど海外の成長市場で鋼から完成品まで一貫生産し、最適な鋼材を投入する適“鋼”適所を推し進める。海外でも「鉄は国家なり」を体現し、国の基幹産業請負人になる自画像を描く。

■連載予定 ※内容は変更する場合があります
(1)日本製鉄、V字回復を成し遂げた橋本改革の真相
(2)日本製鉄、負け犬体質を払しょく トヨタがのんだ大幅値上げ
(3)日本製鉄の橋本社長「危機の真因は10年前の経営統合にあった」
(4)日本製鉄の改革が教える 「利益なき顧客至上主義」への戒め
(5)道険し脱炭素 日本製鉄、“静脈”人材に託す
(6)日本製鉄のグローバルな適“鋼”適所 海外生産が日本を上回る日(今回)
(7)目指せDXの鉄人 日本製鉄が築く「考える製鉄所」

 「コーハイプロッバイ!」。タイ鉄鋼大手、GスチールとGJスチールの製鉄所では今春から、従業員たちが胸に手を当ててこんなあいさつを交わすようになった。日本の製鉄所ではお決まりの「ご安全に!」という意味だ。

G/GJスチールスチールは電炉から圧延まで一貫生産設備を持つタイ唯一の製鉄会社
G/GJスチールスチールは電炉から圧延まで一貫生産設備を持つタイ唯一の製鉄会社

 G/GJスチールは3月、日鉄が約550億円を投じ買収した。21年の連結売上高は342億2100万バーツ(約1370億円)で営業利益は1億6100万ドルだった。19年にファンドが経営権を取得する前は経営不振に陥っていたが、体質改善を進め4期連続の営業赤字から脱却。日鉄は絶妙なタイミングで買収した。

トップは「ミスターTPM」

 G/GJスチールは鉄スクラップを溶かして製鋼する電炉から圧延設備までをそろえるタイ唯一の製鉄会社だ。首位サハビリアスチールも電炉は持っていない。「電炉を持っているかいないかで鋼材づくりの自由度は格段に違う。多種多様な需要にきめ細かく対応できる」。日鉄の東南アジア事業を統括する東南アジア日本製鉄の星健一社長はこう説明する。

 タイはもともと日本製鉄の金城湯池だ。日系自動車メーカーが集積し、日鉄は日本から輸出された半製品を現地で加工。ハイテン(高張力鋼板)など高品質の製品を供給してきた。自動車用鋼板の同国シェアはトップとみられる。

 日鉄は自動車用ではタイの「インサイダー」として思う存分立ち回っているが、実は井の中の蛙だった。というのもタイの鉄鋼需要の6割は土木建設向けで、自動車用は20%程度にすぎないからだ。

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