カーボンニュートラルは日本製鉄にとって避けて通れない重大な経営課題だ。製鉄プロセスで出る副産物を価値ある材料に変え、二酸化炭素のオフセットに使い倒す。動き出したのはこれまで脇役だった技術者たち。眠っていた人材力を引き出し難題に挑む。

■連載予定 ※内容は変更する場合があります
(1)日本製鉄、V字回復を成し遂げた橋本改革の真相
(2)日本製鉄、負け犬体質を払しょく トヨタがのんだ大幅値上げ
(3)日本製鉄の橋本社長「危機の真因は10年前の経営統合にあった」
(4)日本製鉄の改革が教える 「利益なき顧客至上主義」への戒め
(5)道険し脱炭素 日本製鉄、“静脈”人材に託す(今回)
(6)日本製鉄、タイで見た適“鋼”適所のグローバル経営
(7)目指せDXの鉄人 日本製鉄が築く「考える製鉄所」

 日鉄は2030年度に二酸化炭素(CO2)排出量を13年度比3割減らし、50年度にゼロにする目標を掲げている。その命運を握るのが大量のCO2を排出する石炭(コークス)の代わりに、水素を使って鉄鉱石から酸素を取り除く「水素還元製鉄」の実用化。できるのはCO2フリーの銑鉄だ。

 その先兵になるのが東日本製鉄所君津地区(千葉県君津市)。ここにそびえる第2高炉が25年度下期から一部、設備を衣替えする。製鉄所内で集めた水素ガスを使いCO2を10%以上減らす実証テストのためだ。

 高炉から出るCO2を回収する技術も使い、計30%を削減する。脱炭素に向けた大きな一里塚になるとあって、プロジェクトを率いる先端技術研究所の野村誠治所長は「時間は一刻の猶予もない。必ず成し遂げる」と強調。技術開発の総本山、REセンター(千葉県富津市)ではチームが一丸となってプラント設計や操業システムの開発に汗をかく。

 水素還元製鉄だけではない。CO2を回収・貯留・再利用する「CCUS」の技術開発でも二の矢、三の矢を放っている。力を発揮するのはこれまで“脇役”だったエンジニアたちだ。

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