2000年代に「ためる、放流する」を自在に繰り返せる“新電源”として注目を集めたものの、原子力発電所再稼働の遅れなどにより、11年を境に需要が急減した日本ガイシの大容量蓄電池「NAS電池」。
参考記事:モノ売りから電力事業者に変身した日本ガイシ NAS電池苦闘の10年
「このままではNAS電池は消えてしまう」――。当時、事業部トップだった日本ガイシの小林茂社長が土俵際で活路を見いだしたのが、電力事業への本格参入だった。
2010年代半ばから電力業界で広がり始めた再生可能エネルギー。だが、国の固定価格買い取り制度(FIT)では発電事業者に電力の需給調整の義務はない。送配電の系統を持つ事業者も太陽光発電などの余剰分を受け入れる余地は少ないまま。充電設備を拡充する需要は盛り上がらず、「火力発電などの既存設備で再エネの変動に対応すれば十分」という旧来の電力ビジネスに変化は起きなかった。
「新しいサービスを考えてみないか」

21年には需給調整市場も創設されることが決まり、余剰電力は市場を通じて売り買いする時代が到来しようとするなか、NAS電池はますます鳴りを潜めた。事業部門の社員は肩身の狭い思いを味わい、社内で時には「金食い虫」とやゆされるようになった
「何かドラスチックに発想を変えなければ本当に消えてしまう」。1993年の入社以来、一貫してNAS電池畑を歩んできたエナジーストレージ事業部の村本正義管理部長は、追い詰められた。それは2011年に電池を納めた客先の事業所で火災事故が起き、辛酸をなめた市岡立美・現事業部長も同じ。変革の糸口をつかもうと必死だった。
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