三菱重工業と関西電力など電力会社4社は29日、安全性を高めた次世代型の原子力発電所を共同開発すると発表した。原発の新増設に後ろ向きだった政府の方針転換を受けた動きで、2011年の福島第1原発事故後の逆風を耐え忍んできた原発サプライヤーにとっては光明といえる。新型炉開発で新増設に弾みがつけば、国内原発産業の復興への道が開く。
三菱重工と関電、北海道電力、四国電力、九州電力が開発に乗り出すのは、出力120万キロワットの「革新軽水炉」を中核とする次世代原発。現在電力4社が採用する三菱重工製のPWR(加圧水型軽水炉)を改良したプラントで、福島第1原発事故などを踏まえて安全性を高めたのが特徴だ。

再生可能エネルギーの援軍に
緊急時の対応力に優れ、事故で原子炉を冷やせない状態に陥り、燃料が溶け出しても、それを受け止める「コアキャッチャー」を備える。放射性物質を原子炉建屋内に封じ込めるシステムも取り入れる。キセノンなど希ガスが万一ベントから漏れても、二重に施された特殊フィルターがガスを吸着する。
「再生可能エネルギーと協調しやすくなる」(三菱重工)特徴も見逃せない。太陽光など再生エネは発電量が天候などに左右されやすく、どうしてもばらつきが生じる。出力の波を抑える必要があるが、既設の原発は頻繁な出力調整ができない設計になっている。
出力を半分に落としたり、元に戻したりするのに1時間かかる場合もあるが、新型炉は核反応を調整する制御棒の駆動システムを改善。出力を半分に落としたり、元に戻したりする時間を17分と従来の4分の1程度に短くする。再生エネの弱点を補う援軍になるというわけだ。

開発を主導する三菱重工は電力4社の要望を取り込みながら本格的な設計作業に入る。電力会社の立地選定を経て、2020年代後半に着工。30年代半ばの完工を目指す。新設する電力会社は25年までに政府の原子力規制委員会に安全性の審査を申し出るとみられる。ただし新型炉だけに審査に時間がかかり、稼働時期が遅れる可能性もある。
苦境で撤退相次いだ10年
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