支払い手段多様化で余裕なく

 背景には、現金の受け渡しなど接客対応できる人手が不足しているほか、接客できてもクレジットカードからQRコードまで支払い手段が多様化し、現金精算まで手が回らない小売り側の実情がある。

 飲食サービス業や生活関連サービス業などの有効求人倍率は新型コロナの影響で低迷していたが、5月の新規求人数は前年同月から増加。求人数の回復で倍率も中期的には増える見通しで人手不足が抜本的に改善する兆しはない。

 その結果、2015年はわずか8%だったセルフレジ向け釣り銭機の出荷台数の割合が、「21年には有人レジ向けを初めて逆転する可能性が出てきた」(グローリー)。さらに、キャッシュレスで間違いなく金額が決済される時代にあって、「自分が現金を扱って金額を間違えたくないという店員の心理も強くなっている」(清水徳弥上席執行役員)ことも消費者が自分で精算するセルフレジの普及に拍車をかけているようだ。

 高齢者は機械を使って自分で精算することを敬遠しがちのように思えるが、「すでに多くの医療機関では精算にセルフレジを導入しており、高齢の方もかなり慣れている」(清水氏)のだという。同社は医療機関向けの精算機も手掛けており、高齢者にとってもなじみ深く使い勝手がいいことが需要増にもつながっている。

 長年、量販店から飲食店までニッポンの「お会計」の現場とともに歩んできたグローリーだが、伸びが見込まれるセルフレジ向け現金処理機に安住しているわけではない。脱現金の時流を読みキャッシュレスサービスとの二刀流で生き残りを図っている。

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