日本企業2社で約6割の世界シェアを誇る半導体の母材、シリコンウエハー。その1社、SUMCOの旗艦拠点、伊万里工場(佐賀県伊万里市)に、日経ビジネスがメディアとして初めて入ることを許された。現場では他社がマネできないアナログ技術がブラックボックスとなっており、これにAI(人工知能)などデジタル技術を掛け合わせることで、生産性や収益性を高める取り組みが進む。スマートフォンから自動運転まで、先端技術に欠かせない半導体の母なるウエハーが生まれる現場にようこそ。

 半導体ウエハーは円筒状に成長させた単結晶のシリコン(ケイ素)を円盤状にスライスした材料。半導体メーカーはこれを仕入れて、ウエハー上に微細な電子回路を描いたり電極を形成したりして最終的にチップとして切り出す。

 まずはSUMCOの主力製品である直径300ミリメートルウエハーがどれだけ精密か、例えを用いて説明しよう。まず、ウエハーの平たん度だが、直径300メートルの競技場の大きさに拡大したと仮定すると、地面の高低差はわずか0.1ミリ以下でしかない。

 また、ウエハー表面には20ナノ(ナノは10億分の1)メートルの微細異物が数個しか許されない。これは直径300キロメートル(北九州市と鹿児島県指宿市のおおよその直線距離)の円形の土地(約7万平方キロメートル、ほぼ九州2個分の面積に相当)に1円玉が数個転がっている程度の異物しか存在しない、といえば分かりやすい。

 足元では、回路線幅3ナノの最先端ロジック(演算)半導体向けにさらに精度を高めているとみられ、顧客が要求する品質水準は一段と高まっている。

SUMCOが生産するシリコンウエハー。円筒状のインゴットから円盤状のウエハーを切り出す
SUMCOが生産するシリコンウエハー。円筒状のインゴットから円盤状のウエハーを切り出す

 台湾の台湾積体電路製造(TSMC)、米インテル、韓国サムスン電子など、世界の有力半導体メーカーからパートナーに選ばれているのは、この品質の高さゆえだが、実際、伊万里工場ではどのようにウエハーが量産されているのか。現地に向かった。

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