脱炭素やエネルギー安全保障強化の流れを背景に、再び注目を集める原子力発電事業。その負の産物である放射性廃棄物を減らすための再処理工場が9月末にも青森県六ケ所村に完成する。国内初の再処理プラント建設の幹事会社を務めたのは三菱重工業だ。新型原子炉の開発や営業を光が当たりやすい「表舞台」とすると、再処理工場は「裏方」と言えるかもしれない。しかも、何度も完成延期を繰り返すなどいばらの道を歩んだ。担当社員たちはどんな思いで仕事に取り組んできたのだろうか。
まず、核燃料サイクルをおさらいしておこう。原発の燃料であるウランはウラン235とウラン238があり、ウラン238は中性子を吸収すると、一部がプルトニウムに変わる。このプルトニウムとまだ使えるウラン235を回収し、ウラン燃料や「MOX」というウランとプルトニウムを混ぜた酸化物燃料に再加工。原発で再利用する。
リサイクルすれば通常、地下深くに埋設する高レベル放射性廃棄物の体積を4分の1に減らすことができ、「核のゴミ」の解決に一定の役割を果たす。原発再稼働の機運が高まり、核燃料サイクルも動き出せば、「準国産エネルギー」としての位置付けが鮮明になる。

その核燃料サイクルの要になるのが、青森県六ケ所村にできる日本原燃の再処理工場だ。使用済み核燃料の受け入れ、せん断、ウラン・プルトニウムの分離、精製などの工程から成る。三菱重工はこの工場の設計、設備の製作、据え付け工事などを担う。
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