北陸の繊維産地でテキスタイル(布地織物)の受託製造に甘んじず、自社ブランドを打ち立てて勝負しようとするドン・キホーテがいる。カジナイロン(金沢市)、カジレーネ(石川県かほく市)を率いる梶政隆社長だ。糸やテキスタイルの加工では一日の長があり、ものづくりへのこだわりをブランドに昇華。収益拡大につなげている。「座して死を待つ」のではなく、無謀といわれても寄って立つべき道を切り開く。

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 「こんなもん売れるか」。梶社長はアパレル大手首脳が発した辛らつな一言が今も忘れられない。6年前、ポーチなど自社のテキスタイルを使ったトラベル用品ブランドを立ち上げてしばらくたったころだ。

極細糸を撚る独自技術

 無論、糸加工やテキスタイルが主力の中小企業が消費者向けビジネスに分け入ることに不安がなかったわけではない。だが、「長年鍛えてきた極細糸を織物にする技術や、(日本の織物生産の約半分を占める)北陸という産地が持つ付加価値は消費者に響くはず」と自らの信念に従った。

カジナイロンなどを率いる梶政隆社長は自社ブランドにこだわる
カジナイロンなどを率いる梶政隆社長は自社ブランドにこだわる

 カジナイロンやカジレーネなどの企業群であるカジグループ。母体となったのは1934年創業の梶製作所だ。繊維をロールから送り出してよる機械や、繊維に樹脂添加剤をつける機械など、他のメーカーがやらないニッチな機械を長年手掛けてきた。今も「梶しかできない」と世界中から注文が舞い込むが、カジグループの現在の主力はナイロンを中心としたテキスタイル加工だ。

 競合他社がうなるのが、髪の毛の3分の1ほどの細さの7デニール(9000メートルで7グラム)の極細繊維を加工する技術だ。通常、極細糸の加工は一方向に撚(よ)る「撚糸(ねんし)」だけだが、カジグループは一回撚糸するだけではなく、逆方向にも回転させて撚糸する。左右反対のよりが入って、そのねじれから解放されると通常より糸はフワッと波打ち、かさ高になる。

 これが「なかなか他社がまねできない」(梶社長)技術。この糸を使った高密度のテキスタイルはやわらかくストレッチ性があり、風合いもなめらかなのだ。

糸加工からテキスタイルまで一貫生産する
糸加工からテキスタイルまで一貫生産する

 その実力を買って名うてのアパレルも多く採用している。例えば「ザ・ノース・フェイス」ブランドの製品をライセンス販売するゴールドウインは、カジグループのテキスタイルを使ったスポーツウエアを企画、販売する。

 2020年から供給を始めたランニングパンツ素材は、ももに当たる裾の部分は縫製していない。カットしたペラペラの布地のままだ。特殊加工でほつれることはないという。快適な肌当たりを実現しており、発売以来トレイルランナーを中心に愛好家が増え好調な売れ行きという。

新発売のランニングパンツは快適な脚の運動を実現
新発売のランニングパンツは快適な脚の運動を実現

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