中国に席巻される日本の繊維産業にあって、独自の地位を築き盤石の強さを誇るメーカーがある。丸井織物(石川県中能登町)だ。髪の毛の6分の1の極細繊維を高付加価値なテキスタイル(布地)に仕上げる技術は、名うての大手SPA(製造小売り)やアパレルブランドを引き寄せる。受託生産に飽き足らず、消費者がデザインしたTシャツなどをオンラインで生産するD2C(製造直販)にも進出して話題をさらっている。成長の原動力はマシンガンのような積極的なM&A(合併・買収)と新事業開発を若手に託す大胆さだ。

 「ん? 一体ここは?」。石川県は能登半島のおへそに位置する中能登町。記者が丸井織物の宮本米蔵副社長に連れられてやってきたのは、小高い町の丘にたたずむ、さびれた廃校だった。

 ホラー映画を思わせる外観だが、足を踏み入れるとそこにはワンダーランドのような工場が広がっていた。今も黒板が残るかつての教室、図書室や食堂だった部屋に、セイコーエプソン製のインクジェットプリンターが所狭しと並んでいる。

 丸井織物がこの工場で手掛けているのはTシャツなどのプリンティングだ。色とりどりの無地のTシャツに、インクジェットプリンターが次々と多種多様なデザインを描いていく。ベートーベンやバッハなどの肖像画が並ぶ音楽室は資材倉庫代わりだ。町とは借地契約を結んでいるが、賃料はタダという。

各教室で次々とTシャツにプリンティングされていく
各教室で次々とTシャツにプリンティングされていく

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